1-3
一年後、俺は六歳になっていた。
魔導師ランクも総合Cランクを取得し、使える魔法も大きく増えた。これもひとえに一年もの間、俺を鍛えるためにハラオウン家に残り続けてくれたリーゼの二人のおかげである。
原作のクロノはリーゼたちのしごきに相当参り、なんであれが僕の師匠なんだと嘆いていたようだったが、俺にとってはそうではない。確かにやっていることは無茶苦茶だったり、俺をいじめることに楽しみを感じているような根性曲がった部分もあるにはあるが、それでもそれはすべて俺が効率よく成長するように促している部分が随所に見受けられた。
たとえば俺をボコボコにしている時だって、攻撃してくる箇所は急所を外して攻撃していたし、逆に組み手をする時はこちらの攻撃が相手の急所に向かうように導いていた。おかげで格闘戦では自然と相手の急所を狙う癖がついた。もちろんそればかりではいけないから、ちゃんと急所を意図的に狙わないようにする訓練もさせられたが。
魔法だって、アリアが撃ってくるものはいつも術式が読み取りやすいように書き換えられていた。俺がアリアの魔法を見ながら勉強して盗めるようにするためだろう。さらにいえば魔法を食らって気絶した時も、無駄に気絶させることはしない。一度頭を切り替えさせるべきと判断した時や、無茶をしがちな俺の意識を強制的に刈り取って休憩を入れるためという場合もあった。
おそらく幼かったクロノにはそれがよく理解できていなかったのだろう。だからトラウマのような形で残ったのだと思う。成長して当時の意図に気づくことは出来たのだろうが、それでも反射的に幼いころの記憶が蘇ってしまうので苦手意識を持ってしまったのだ。トラウマとはそういうものである。
だが、俺はもともとがそれなりに成長していた青年だった。自意識がしっかりしていたし、それなりに周囲を客観的に見る術も心得ていた。だからこそ俺はすぐに気づくことが出来たのだ。
それ以降、俺の中であの二人は厳しいながらも相手を思いやって、結果として最高の指導を施してくれる尊敬すべき存在となった。もし俺がいつか原作に沿うようになったら、なのはにリーゼの二人に指導を受けろと言ってやろうと思う。教導官となるならあの二人の存在は大きなプラスになるはずだ。
とはいえそれは八年も先の話。今はとりあえず自分の向上に全力を傾ける。というわけで、六歳となった俺は、今日も今日とて二人相手に訓練を続けているのだった。
「――いけっ!」
≪Shot≫
俺の意志に従い、右手に握ったデバイスから発射の合図が告げられる。そして次の瞬間、生成した二つのスフィアがバインド魔法を投げかけようとしていたアリアに向かって飛んで行く。アリアは術式を破棄。スフィアに向かってシールドを展開すると、スフィアが接触した瞬間にシールドを傾けてそれらを反らしてかわした。
それを難なくできるセンスと能力には脱帽だ。遠目でそれを確認して、俺は内心で溜め息を吐く。
「ほらクロすけ! こっちが御留守になってるよ!」
「くっ……!」
接近してきていたロッテが、力強く拳を俺に繰り出す。咄嗟にそれをS2Uで受け止めて、なんとか受け流すと、俺はすぐさま距離を取った。相手に主導権を握られたまま近接戦なんて冗談じゃない。その相手がロッテなのだからなおさらである。
その間にロッテの隣にはアリアが並んでいた。追撃するつもりがないのは、これが模擬戦の形をとっているとはいえ、準備運動も兼ねているものだからだろう。別に攻めきる必要がないのだから当然である。
「ストレージとはいえ、やっぱりいいデバイスだねぇ、それ。さすがはリンディさん」
「ふん、羨ましがってもあげないからな」
感心したように言うロッテに、俺は俺で得意げにそう返した。
ストレージデバイス・S2U。
これは六歳の誕生日に、母さんが俺に贈ってくれたものだった。その頃すでに基礎的な訓練はそれなりに成果を出したので終えていた俺は、アリアから魔法について深く学んでいた時期だった。アリアの得意なバインド系にはじまり、基本魔法として魔力スフィアによる魔力弾攻撃。砲撃魔法、トラップ、補助魔法、フィールド魔法、儀式魔法、などなど。とりあえず魔法に対する知識を詰め込んでいた時期だった。
そして、その中でいくつか実践も行い、訓練の中に魔法を用いた戦闘を取り入れ出したのもちょうどその頃だった。
それを知った母さんは、なら早いうちに効率的に魔法を運用する方法を身につけた方がいいということで、ストレージデバイスを製作して俺にプレゼントしてくれたのだ。
デバイスは文字通り魔導師の相棒である。デバイスに組み込まれた演算装置によって、魔導師はより効率的に魔法を使うことが出来るようになる。プログラムとして仕込んでおいて、キーワードで発動する魔法などはその典型だろう。インテリジェントデバイスになると、主の危機の際に自分で勝手に魔法を行使するということも可能になるが、今の俺にはそれを扱いきれる実力はないので、こうしてストレージが贈られたわけだ。
原作でクロノも使っていたデバイス、S2U。まさかそれを俺がこうして手にする時が来るとは、人生わからないものだ。
ちなみにやっぱり入力されている音声データは母さんのものだった。自分がいささかマザコン気味であることは自覚しているが、それでもこれは少し恥ずかしい。今でこそ慣れたが、しばらくは主にロッテにからかわれっぱなしだった。しかしながらS2Uを手にする俺を見て嬉しそうに微笑む母さんを見ては俺も何も言えず、頼りになる相棒として今もS2Uは俺の手におさまっている。
そんなわけで、それ以降の戦闘訓練では基本的にS2Uを用いた訓練が課されるようになった。まさにリリカルなのはって感じだ。その訓練を始めた時の俺の感想である。
「さて。準備運動も終わったところで、今日はロッテと格闘訓練よ。使用魔法に制限はなし。バリアジャケットの破壊もしくは気絶した時点で戦闘終了。それと、一応クロノがロッテを気絶させても戦闘終了」
「ちょ、おま。一応とか言うなよ。やる気なくすだろ」
「だって無理だもの」
「ぐっ」
ひどい言われようだがまぎれもない事実であるので言い返すことも出来ない。いまだに俺はロッテに一発入れることすら出来ないのだ。それで確かに偉そうなことは言えない。
……ふふふ、だがしかしだ。今日の俺は一味違う。言うならばクロノ・クライマックスフォームといったところか。この日のために編み出した俺の必殺技Part1を食らわせてやる。いや、実際は別に必殺ってわけではない小手先の技なんだが、とりあえず奥の手があるということだ。
「というわけでさあ行くぜ! 今日の俺は最初っからクライマックスだぜ!」
「何がというわけでクライマックスがなんのことなのかはさっぱりだけど……まあいいわ。それじゃあ――スタート!」
アリアの合図を受けて、早速ロッテが俺に向かって突進してくる。
ロッテの基本戦術は突っ込んで殴ってぶっ飛ばすだ。それを恐ろしく緻密で隙のない姿勢制御と、緩急を織り交ぜた変則的な機動力、そして大胆かつ強力無比な打撃で行ってくるので、言葉にすれば馬鹿みたいな戦術だが、実際にやられるとまず負ける。
使い魔とはいえ、Sランク相当という実力は伊達ではないということだ。とはいえ、今の彼女のランクはB相当だ。俺の相手をするために模擬戦を行う時はランクを落としていると聞いている。だが戦闘経験もろもろはSランクのそれなのだ。Bとはいえ、そこら辺のBランク魔導師とは比べ物にならない実力である。
対する俺はCランクをとったばかりのひよっ子魔導師。しかも格闘や魔法技術は彼女らの教えなので、癖やパターンは知りつくされている。だからこそ、ここでは俺がどれだけ自分で考えて戦えるかが試される。
「上がるぞ!」
≪Higher move≫
S2Uから魔法発動の声が響き、俺の身体は上空へと打ち上げられる。
オリジナル魔法・ハイアームーブ。オリジナルとはいうが、要するになのはのフライアーフィンのようなものだ。飛行・高速移動のための魔法である。なのはの場合は足もとに羽が現れていたが、俺の場合はよく見ると足の裏に小さな円盤がくっついている。これが姿勢制御と加速の役割を果たすのだ。
加速時は俺にとって実にすばらしい瞬間だ。ブラックサレナを彷彿とするそのブーストは、確実に俺を満足させてくれる。
空に飛び上がった俺に、ロッテが同じく飛行魔法で追って来る。だがそれを見越して、俺はその通り道にバインドを設置してある。アリアから見れば拙いそれだが、引っ掛かれば十秒は動けない。
ロッテがそれに引っ掛かるかは別にして、俺は少しずつその場から離れながら魔力スフィアを生成する。
バインドを設置した空間にロッテが入った。その瞬間、設置型のディレイバインドが発動する。ロッテの手足を拘束しようと術が迫るが、ロッテは空中とは思えない曲芸的な動きで迫るバインドを危なげなくかわしていく。その様はまさに猫だ。捕らえようとする人間の手から逃れる猫。そのすばしっこさは人間には出来ないものだろう。
やはりバインド程度じゃダメか。俺はバインド空間を抜ける瞬間を狙ってスフィアを撃ち出すために神経を集中させる。絶妙なタイミングをものにしなければ、なんの効果もないまま終わるだろう。
「――ショット!」
瞬間、三つのスフィアがロッテが最後のバインドの有効範囲から抜け出る直前に撃ち出される。ロッテがバインドをかわしたと同時に、三方向から俺の攻撃が迫る。二つは見事にかわしたが、一つは確実に当たるコースに乗っている。
やった! 俺がそう思った瞬間、俺は信じられないものを見た。
なんとロッテは足に魔力を纏わせて迫るスフィアを蹴り飛ばしたのである。
「ちょ、それどう見たってチートだろ、おい!」
納得いかない俺が騒ぐ間に、蹴り飛ばされたスフィアがこっちに向かってくる。俺がそれをよけようとしたところで、今俺が動こうとした側にロッテが移動し始めているのが見えた。俺は舌打ちをしてもうひとつスフィアを出現させると、それをぶつけてスフィア同士を打ち消した。
そしてすぐさまこっちからロッテに突進していく。
「ん、やぶれかぶれかクロすけ?」
「さてね!」
S2Uにスフィアをひとつ待機状態で準備させながら、俺はロッテに向かっていく。ロッテも向かい合うことにしたのか、わずかに腰を落とした。その間にも俺はどんどんロッテに近づいて行く。あと五メートル……四メートル……三メートル……二メートルを超えた!
よし、今だ!
俺は急加速と持てる姿勢制御技術を総動員させて、高速移動中にロッテに向かっていた自身を無理やり上空へと向けさせた。こちらを見やるロッテ。そこに、俺は待機状態にしてあったスフィアを現出させて高速で撃ち出す。
「喰らえ!」
≪Shot≫
至近距離からの高速射撃。俺は撃ち出した弾の操作は未だにできないが、これなら命中精度なんて関係ない。寸分違わずスフィアはロッテに命中して飛び散った魔力の残滓で煙が起こる。
その間に俺は上空でさらに姿勢制御。一転してロッテのほうに身体を向ける。
「ブーストぉ!」
意に従い、足の裏の円盤から魔力が噴き出す。それを推進力に俺の身体はぐんぐんと速度を速める。落下速度も加わり、俺は一つの弾丸と化していた。
撒き散らされた煙が晴れるか否かといったところで、ロッテがラウンドシールドを張ったのが見えた。確かに今このタイミングでフィールドを発動させていない俺では、そのシールドは抜けないだろう。だが、それこそが狙い目だった。
確かに壁状のものを作り出す時間も場所の余裕もない。だが、俺の稀少技能であるATフィールドは、その形を変えて自由な場所に現出させられるのである。俺はシールドなんて構わずに思いっきり拳を突き出す。拳の先には、八角形の小さな水色の膜。
「抜けろっ!」
言葉と共に拳がシールドに触れた瞬間、泡がはじけるようにシールドが喪失する。もちろんこの時点で俺の速度は少しも損なわれていない。落下速度にハイアームーブで加速し、拳の先にはATフィールド。バリアジャケットであろうと擦り抜けるそれならば、十分にダメージを与えられる!
――そう、当たったならば。
「へ?」
思わず間抜けな声が漏れた。シールドを破り、確かにその先にいたロッテの姿が、消えていたからだ。
「ふっふーん、惜しかったねぇクロすけ♪」
ロッテは半身だけ身体をずらして俺の突撃をかわしていた。軸足を中心に、円を描くように横を向いただけ。だがそれだけで、一メートル近くも目標が横にずれたことになる。当たるわけがない。
俺は落ちていく身体に必死に制御をかけ、ロッテの追撃に備えようとするが……結果から言えばそれは間に合わなかった。
「じゃ、ジ・エンド」
落下しながら抵抗を試みる俺に向かって、上空からロッテが思いっきり蹴りを入れる。横腹を思いっきり蹴りぬかれた俺は、悶絶しながら地上へと強制的に戻されて、アリアが張った衝撃吸収の魔法陣に受け止められたところで、意識を失った。
………………。
……しばらくして俺が意識を取り戻すと、俺は自分が横たえられていることを知った。しかも、何だか頭の後ろが妙に温かく柔らかい。閉じていた目を開く。すると、俺を見下ろすアリアの顔と胸が見えた。
「あら、起きたみたいね」
「ふひひ、アリアの膝枕とはいいご身分だねぇ」
膝枕……?
言われて、はっと気が付く。そうだ、俺の目に映るものが空とアリアの顔と胸ということは、構図的に俺が膝枕されているとしか考えられないじゃないか!
それを悟った俺は、焦って身体を起こす。
「づっ!?」
が、見事に失敗して草原に転がった。
右わき腹が死ぬほど痛い。身体の芯に重く響く痛みは、まるで腹の中でデカい鐘を鳴らされているようだった。さっき最後にロッテに蹴られたところだろう。ズキズキと痛むそこは、当分収まりそうになかった。
「まったくもう、肋骨までいったみたいだから動かないように」
アリアが呆れたような声を出して、悶絶している俺の頭を再度自分の膝に乗せる。恥ずかしい気持ちはあるが、そんなこと気にならないほどに今の俺は痛みと戦うことで精いっぱいだった。しかしながらそれ以上にアリアの太腿に全意識を傾けられないのは残念と言わざるを得ない。
「今なにか妙なこと考えた?」
アリアの言葉に俺は全力で首を振る。ちくしょう、仕方ないじゃないか。俺だって男の子だもん。
「それにしても、ここ最近じゃあ一番短い決着だったねぇ。開始五分で終了だよ」
「ぐっ……」
ぐうの音も出ない。ちなみにここのところは十分以上の奮戦もわりとやっていた。もちろん手加減されているが、ロッテもアリアも基本的に能力をBランク程度に抑えて戦ってくれている。それでも戦闘の上手さなどでまったくと言っていいほど歯が立たないのだが。しかし、Bランクとはいえこの二人の片割れ相手に十分以上持つということは密かな自信でもあったんだが……そんなささやかな自信は木っ端みじんに粉砕されてしまった。
「ロッテ、いじめるのもそこまでにしておきなさい。本当は違うくせに」
「え……?」
アリアの言葉に、ロッテははーいと答えてにやにやと笑う。まったく、と呆れた風を装いながらもアリアもどこか機嫌がよく見える。いったいどうしたというのだろうか。
俺の疑問の顔を見てとったのか、アリアが少し楽しげに笑う。
「ロッテはね、さっき少しだけ手加減しなかったのよ」
もちろんBランクとしてのだけど、とアリアは付け加えた。
その言葉に俺は呆然とする。少しとはいえ、ロッテが俺に手を抜かなかった? まさか、そんなことがあったなんて信じられん。
「クロノのフィールドがロッテのシールドを破った瞬間、ロッテは本気で回避運動を取った。たったそれだけ、一瞬のことだったけれど、ロッテはあなたに本気を見せたのよ」
半身だけずらすという余裕の回避。だが、それは回避スピードが本気であったからの余裕だったのだという。
アリアはそう説明してくれたが、俺としてはやはり信じがたい。一年間鍛えられたことで、この二人の強さや凄さは骨身にしみて分かっている。俺なんか身体にかすることすら叶わないほどの凄腕だと経験から理解している。
だというのに、魔法を習い始めて一年の俺がいくら多くの制限付きとはいえロッテを一瞬本気にさせただって? 冗談としてもあり得ない。なにしろ俺は潜在的な魔力資質こそ高いが、死ぬほどの努力を繰り返さなければそれが花開かないクロノである。一年程度で開花するとは到底思えない。
そんな俺の心がわかったのか、アリアは苦笑してロッテを呼び寄せる。ロッテは仕方ないなぁといった顔をしながら俺に近づき、普段からは考えられないほど優しい手つきで俺の頭を撫でた。
「ま、アリアの言う通りだよ。あの瞬間、回避の時はあたしも本気だった。それに、あのフィールドの応用もなかなか良かったね。あれなら目立たないし、魔力の消費量も少なくて済む。考えたじゃんクロすけ」
くしゃくしゃと髪をかきまぜてニッと笑うロッテ。ちくしょう、かっこいいじゃないかコノヤロウ。なんだその爽やかさは。思わず惚れそうになったぜ。
しかもロッテ本人がそう言うってことは、俺は本当にその快挙を成し遂げたらしい。そう思うと徐々に実感もわいてくるし、喜びも感じてくる。じわじわと心の内に広がる達成感は本当に心地よくて、俺は頬を緩むのが止められなかった。
何より、この二人にほんの少し認められたということが嬉しい。俺の尊敬する師匠たちなのだ。その二人にこれだけ褒められて嬉しくないはずがあるだろうか。
そんなふうにささやかな幸福感に浸っている俺の上で、アリアとロッテが会話を続ける。
「まあ、もともと今のクロノはBランク相当の実力はあるしね」
――……え?
「あはは、まあねぇ。あたしらがDランク以上が使う魔法とか教えてないだけでほとんどまあBだわね。正確にはB目前のCね」
ち、ちょっと?
「それにしてもクロノの成長速度は異常の一言ね。この年齢で一年でDからBよ。どういうことかしら」
「さあ、さすがはハラオウンってことかもね。まあそれ以降ぷっつり成長は途絶えてるわけだし、案外ここで打ち止めなんじゃない?」
え、ちょっと今ものすごいこと言いませんでした!?
「そうね。魔力量もこの一年の成長速度と比べれば十分の一程度だし、あとは格闘とか新しい魔法を覚えること、それから魔法理論に手を加えて工夫するしかないかも」
「まあ、それは士官学校に行ってからでもいいでしょ。少なくともあと五年はBのままだって」
「確かに」
あっはっはと笑うロッテと、ふふふと笑うアリア。だがしかし、俺はまったく笑えない。
今の段階でB直前のCだということも驚きであるし、それ以降まったく魔力資質が成長していないということも不安をあおる。実質的な意味でクロノではない俺としては、本当に原作当時までにAAA+まで持っていけるかということは切実な問題だった。
執務官を受けるにはAAあれば受験は出来るが、合格できるかどうかも未知数である。だというのに、その可能性を潰すようなことまで言われてはたまったものではない。まだ六歳であることを考えれば成長する可能性は大だが、師匠にそんなことを言われては立つ瀬がないではないか。
しくしくと心で涙を流していると、アリアがいたずらっぽく笑って俺の頭に手を置いた。
「あら、少しイジメすぎたかしら」
「あっはは、安心しなクロすけ。確かに成長は止まってるけど、それ以外で成長する方法はいくらでもあるさ。それにお前まだ六歳だろうが。学校行ける最低年齢までには運が良ければもうワンランク上がるって!」
それって今がCなんだからBになるだけじゃ? 小声でそう問うと、ロッテは何も答えずただ大きな声で笑った。
ちくしょう、やっぱりそうかよ! 絶望した! 気の利いた嘘すら言わないロッテに絶望した!
今度は心の中ではなくリアルに涙を流す俺。しくしくと涙を流す俺の頭を撫でてくれるアリア。うう、なんて優しいんだアリアさん。これは惚れざるをえないぜ。
しかし客観的に見ると女性の太腿に縋りついて泣く俺って相当かっこ悪いような。自覚してはいるんだが、まだ脇腹は痛いし、ロッテの言葉はひどいしで立ち直れそうにない。太腿も気持ちいいし。
「クロノ、何か変なこと考えた?」
「いいえ、まったく」
笑顔が怖いよ姐さん。俺は泣きつつも冷や汗を流して、死後硬直を起こしたかのように静かにアリアの膝枕で身体を休めるのだった。
※クライマックス、必殺技Part1
「仮面ライダー電王」より。クライマックスフォームは、主人公野上良太郎がライダーに変身した時の一番すげえじゃんと言いたくなる状態のやつ。モモタロスのセリフ「俺は最初っからクライマックスだぜ!」からも。
※ブラックサレナ
「劇場版機動戦艦ナデシコ」より。本編での主人公テンカワ・アキトが本作中で駆る機体。両足の裏にブラスターがあり、宇宙戦主体の機体となっている。ちなみにその構造上、ブラックサレナは歩けない。
※絶望した!○○に絶望した!
「絶望先生」での有名なフレーズ。主人公・糸色望は各話で必ずこのフレーズを口にする。
あとがき
とりあえず続き。第一部は速攻で終わらせて士官学校時代に行きたいです。
とりあえず今後の流れ的には、
1…幼少期
2…士官学校時代
3…原作無印
っていう流れでやっていきたいですな。早く3まで持って行ってみたいなぁ。
↑あんま強くないよねw
リアルで必殺剣とかやったところで漫画のように無駄にかっこいいのは無理ってことですな
なのは狂化(誤字にあらず)計画
白い悪魔様を地獄の猫姉妹に弟子入りさせるなんて!
まぁ確かに管理局正式に入る前に弟子入りさせときゃストライカーズ前の撃墜リハビリ等は消滅するでしょうが二つ名のレベルがさらに上がりそうで怖い
なのはの弟子にも当然影響出るでしょうから管理局魔導師自体のレベル向上にも繋がりそうですが6課にいくのが無理になりそう
まあごちゃごちゃしただけという意見もあるぐらいですからね^^;
なのは狂化計画w クロノ自身はそんなつもりで言ったんじゃないんですけどねw
でも実際、なのはって猫らには指導受けてないと思うんですよね。DからAAA+まで持っていく基礎を作った二人なのに。というわけで、ちょっと書いてみたのでした~。
>たのじさん
「きょう×なの」は恋愛分重視ですからね。こっちは完全に遊び重視ですw
エイミィは第二部から登場。次回にご期待ください~。
>AKIさん
ありがとうございます。
他の話はしばしお待ちを^^; 「きょう×なの」も次話が少しどうしようかなぁと悩んでいるんですよ。
だからこそこのSS書いたわけですけどw
>三日月さん
はじめまして、三日月さん。
いやいやそう言ってもらえると嬉しいですね。ノリヤテンポはまだ私もよく分かっていないところが多いので、なかなか難しいです。
今まではシリアスとか恋愛中心が多かったからなぁ。
>イルカさん
はじめましてですイルカさん。
なのはの憑依っていうと、いちばん有名なのはユーノ憑依でしょうか。
クロノはたぶん最初だと思います。
これからクロノがどんなふうになるのか、ぜひお楽しみに~^^
>ちゃんこさん
ありがとうございます。
やっぱり応援があると嬉しいですね。次回もまた読んでやってください~^^
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