2-2
場所は時空管理局地上本部が置かれている、ミッドチルダ首都クラナガン。その外れ、近郊というには遠く、離れていると言い難いほどには近いという実に微妙なところに、その訓練施設はあった。
周囲を森に囲まれた管理局所有の局有地であるここ一帯の森は、その訓練施設を入り口として、それなりの広さを誇っているのがわかる。木々は生い茂っているが動物の姿は確認できない明らかに人工的に作られた森である。転送装置によって施設まで移動した俺たちはブレイド教官に従い、全員が施設に入りそこのホールに集められ、今回行われる訓練についての説明を受けた。
訓練自体は至極単純だ。森の中を特殊士官クラスの生徒は所定のコースに従って進み、目的地にたどり着け。ただし、途中にある青いスフィアは破壊。赤いスフィアは後方の情報士官にその座標とともに連絡。紫のスフィアは攻撃を加えてくるが、これも破壊せよ。ただそれだけだ。
そして情報士官のほうは、常に相棒の特殊士官のことをモニターでウォッチングすると同時に座標に現れるマークでも確認。スフィアの場所や種類に適切な連絡を行い、場合によっては指示することも考慮すること。相棒がコースから外れないように誘導するとともに、特殊士官には知らされていない制限時間内に彼らがそのことを悟ることなくゴールできるように効率のいいコースを示すこと。
まあ後者のほうは訓練終了後にエイミィに聞いて知ったことだったが。
そのことを知らない俺たちは、意外と簡単な訓練だと思っていたものだ。まあ、実際にはちゃんと落とし穴もあったわけなんだが。
『こちらエイミィ。十一時の方向距離500。青が一つと紫が一つ。その50後ろに赤が一つ。それと、コース右寄りぎりぎりです。注意してください』
「了解。コース修正と共に青と紫の撃破に向かう。赤を確保次第こちらから連絡を入れる」
『了解』
エイミィからの通信を切り、俺は左に身体を寄せつつ森の中を飛ぶ。十一時方向が正面にくると、今度は木々や枝に注意しながら真っすぐに、しかしかなりの速度で俺は空を行く。
本来、こういった森の中で空を飛ぶなどという行為は愚の骨頂でしかない。なぜなら、木が乱立し枝が不規則に飛び出している中で高スピードで空を飛べば、まず事故は避けられないからだ。つまり木にぶつかったり枝に肉を裂かれる目にあうということである。
かといって安全な速度まで落として飛ぶことに意味はない。ほとんど走っている速度と変わらないからだ。そんなわけで、こうした森が訓練地に選ばれた理由は空が得意なエリート連中の目を覚まさせてやるため、という意味合いもあるのだと思う。
だが、残念ながら俺にそれは通じない。理由は俺の飛行魔法である『ハイアームーブ』である。空を飛ぶ魔法とは、接近戦では特に臨機応変に対応しづらいものであるのだが、俺のそれはその常識には当てはまらない。
そも飛行魔法とは空を飛ぶというその時点で完成されているのであって、さらに一ミリ単位での細かい機動は想定されていない。しかしながら俺はそれをどうにかしなければいけなかった。なぜなら俺の主体は近接格闘。であるのに陸戦はできないので、空で戦える術が必要だったからだ。それ以上に出来ないから諦めるのはちょっと気に入らないという理由もあったが。ロッテとの訓練で俺は空中での細かな機動力の重要性を嫌というほどわかっている。だからこそ、幼い頃より俺の関心は「いかに機動力を維持して空を飛ぶか」にあった。
それを考えている中、俺はハイアームーブを利用することを思いついたのだ。ある程度の姿勢制御は円盤を足の裏につけた通常時で対処するが、どうにもきつい場合には円盤を背中に出して調整。頭上に出すこともあれば腹、腕や足、手、さらには片方を消して回転や旋回、上下に一個ずつ現わして伸身一回転なんて真似も出来る。さらに大きさなども微調整すればかなりのバリエーションが出来あがる。自分だけではきついかもしれないが、デバイスの力を借りれば出来ないこともなかった。
そして俺はこれを即座にできるように血のにじむような努力をした。ハイアームーブを開発して、ロッテに細かく問題を指摘されてから現在までの五年間。俺はほとんどそうやって毎日飛ぶ訓練をしてきているのだ。いまでは本当に自分の手足のように円盤を利用している。
そこまでの慣熟しているのであれば、森の中を高速で移動し続けることはいともたやすい。なにしろ実際にそうやってこの魔法の訓練を行っていたこともあるからだ。文字通り慣れ親しんだものである。
そんなわけで、俺はかなりハイスピードで森の中を移動中だ。だからこそエイミィは500も離れているのに今俺に連絡してきたのだ。俺のスピードだとすぐに着いてしまうからである。
「あった、あれか」
エイミィから聞いた通りの距離にあったそれ。青と紫のスフィア。その先、草むらに隠れるように赤いスフィアも確認できる。
こちらが近づいていくと、紫のスフィアから射撃が放たれる。俺はそれをかわしながら近づいていく。一応紫のスフィアには一定空間以内なら動けるように設定されているらしく、遠くからの射撃では当てることがなかなか出来ない。つまり、砲撃魔導師が花形である空戦主体の連中に接近戦を促しているわけだ。
ここまで言えばもう言うまでもないと思うが、この訓練ははっきり言って俺のためにあるようなものだった。森の中を高速で移動し、敵を見つけたらいつも通り即接近、撃破。近接空戦魔導師である俺には造作もないことである。
教官たちも俺のような変わり種は想定していなかったのか、特に俺のようなタイプが嫌がる設定もされていない。たとえばスフィアがいきなりシールドを張ったりして突撃の出鼻をくじかれれば、接近戦主体の魔導師は嫌がるだろうが……俺にはレアスキルがあるからそれも無駄である。どう見てもこのスフィアに使われた魔力量は多くない。恐らくATF(ATフィールド)で消せる。
そう考えると、少々拍子抜けではある。とはいえ訓練は訓練なので、俺は気を抜くような真似だけは自戒しつつ、ATFを小さく拳の先に現す。そしてそのまま紫のスフィアを殴って消滅させ、同様に青も消す。そして油断なく周囲の安全を確認しつつ赤いスフィアに近付き、警戒を続けながらエイミィに連絡を入れる。
「……こちらクロノ。たったいま赤を確保。座標はWエリアの5-2だ。確認頼む」
『こちらエイミィです。確認しました、次のスフィアはそこからさらに十時方向に600メートル進んだ先に四つ反応があります。そこのスフィア群が最後です』
「了解。これから向かう。スフィア群の詳細がわかったら連絡を頼む」
『了解』
通信終了。そして俺は最後となるスフィア群に向かって進行を始める。
それにしても、やはり順調にいきすぎる。まあ相性の問題もあるだろうから、ただ単に今回の訓練は運が良かっただけということだろうが。そもそも俺のような珍しいタイプの魔導師が来ることを前提としたプログラムなんて、用意しているはずもないだろうから、やっぱり今回だけのことだろうなこれは。
そんなことを考えながら移動中、どうにもエイミィから連絡がこないことを不審に思い始める。さっきは500メートル手前で相手の種類も判ってすべて報告してきたというのに、それがない。なにかあったのだろうかと思ってしまうが、かといって足を止めることが良いとも思えない。結局俺が取った手はこちらから連絡を入れることだった。
「こちらクロノ。エイミィ、聞こえるか? スフィア群の情報をくれ」
しかし、反応は返ってこない。
「エイミィ? こちらクロノ・ハラオウンだ。何かあったなら――、っ!?」
言葉の途中で俺は全身が総毛だち、反射的に今の位置よりもさらに高くへと自らを押し上げていた。
そしてさっきまで俺がいたところを、一条の紫色の光が通過していく。
「バカな……砲撃!?」
こんな大規模の攻撃をするスフィアは聞く限りでは設定されていないはずだ。何らかのトラブルだろうかと俺はその光線が撃たれた方向へと視線を向ける。さっきよりも上空にいるだけあって、その発射地点の様子はよく見えた。
そして、視界に飛び込んできたものに俺は驚愕し目を見開いた。
「――で……デカッ!」
そう、そこにはさっきのスフィアの十倍はあろうかという巨体のスフィアが鎮座していたのだ。その周囲には三つの見慣れた大きさのスフィア。もちろんどれも紫色である。
ちなみに通常のスフィアのサイズはバスケットボール程度の大きさだ。その十倍となると、正直、俺よりもでかいかもしれん。
「おいおいなんだよこれ。サプライズか?」
そんなもんはまったくもっていらなかったわけだが。
とりあえずこれはラスボスだと考えればいいのだろうか。エイミィという情報を教えてくれる存在と交信できない以上、それは自分で考えるしかない。
いずれにせよ、紫のスフィアは破壊せよという命令を受けている。だとすれば、これは破壊するのがベターだろう。ベストがなんなのかはまだよくわからないが、破壊して悪いということはなさそうだ。そんなわけで、俺は早速足の裏の円盤から魔力をジェット噴射のように噴出させ、一気に間合いを詰めていく。
しかし、向こうも黙っているつもりはないのか、計四つのスフィアが一斉に俺に牙をむく。
「え、ちょ、おわぁっ!?」
小型スフィアの射撃は絶え間なく続きうっとうしいうえに、デカいほうはデカいほうでこっちがよけたほうを的確に撃って来やがる。本当に自動制御なのかよこいつ。
「ちっ、ATF展開!」
仕方なくATFを展開して、小型からの攻撃は全て無効化する。そして一応デカいほうの砲撃にATFを近づけてみると……なんの抵抗もせず紙のように貫通された。
半ば予想通りにATFが喪失したので、俺はすぐさま近くの木の陰に隠れる。すると射撃はぴたりとやんだ。さすがに魔力弾の誘導操作まではしてこなかったか。俺としてはそれで助かったわけだが。
さて……それにしても少々厄介なことになった。ATFが貫かれたということは、あのデカ物の砲撃は少なくともA以上ということになる。だとすればあいつ本体の所有魔力量はそれなりにあるだろう。とすれば、ATFは小型の弾よけにしかならない。
まあそこらへんは正直そこまで危険視はしていない。手を尽くせば十分に倒せる範囲だからだ。それよりも問題なのは、エイミィと連絡が取れないこと。すなわち、情報が何も入ってこないことである。
そもそもこの訓練は後方の情報士官との連携を学ぶことが大前提にあった訓練だ。だからこそ、俺たち現場には初期の段階で最低限の情報しか伝えられていなかった。あとは訓練中に情報士官から聞いて自分たちで判断しろ、ということだ。だというのに、今こうしてその情報を受けられない状態にある。これは由々しき問題である。あのスフィア群に対する対処の検討もできないのは正直キツイ。俺たちが知らないクリア設定なんかがあったら目も当てられないからだ。
それに外部からの客観的な視点があるというのも、実際の戦闘に大きく差が生まれてくる。一人より二人、一本の矢よりも三本の矢だ。後方支援というものの存在は存外でかいものがある。
「……まあ、悩んでても仕方がない」
このままジリ貧で終わるのもありかもしれないが、それはちょっと気に入らない。だから俺の判断で全てやらせてもらうことにしよう。
すなわち、あのスフィア全部ぶっ壊してコース通りにエリアを抜けてゴールする。至極当たり前、実にシンプルな解答だ。
幸い、俺は最初こそ総合を目指していただけに実は接近だけが取り柄の魔導師ではないんだよねこれが。俺はS2Uを構えると、にやりと笑みを浮かべた。
「スティンガースナイプ」
≪Stinger Snipe≫
杖の先から俺の魔力光である水色をした細い魔力の紐のようなものが勢いよく飛び出していく。
スティンガースナイプ。かつてまだ総合を目指していた頃に取得していた魔法である。案外今でも重宝している便利な魔法だ。射程A威力B+操作性能はダントツのSというわりにはBなりたての俺にも取得できたお手軽な魔法である。
俺はどこまで行っても近接型だ。魔力弾の誘導操作は正直そこまで得意とは言えない。だが、実のところ一、二個ぐらいならそれなりに操作することは出来る。なんといっても俺の魔法の師匠は、あのアリアである。それぐらいのことは当然仕込まれているのだ。
そんなわけで、俺はスティンガースナイプを操り、スフィア達に向かわせていく。でかい奴は無視だ。小型スフィアだけを狙う。まず一番手前のやつを速攻で片付ける。だがスナイプは消えていない。この魔法のいいところはその操作性能もさることながら、連続攻撃が可能な点も挙げられる。俺は一つ目を貫いた勢いのまま、隣のやつも貫く。最後のスフィアから攻撃が来るが、紐状のスナイプに当たるわけもない。俺はそのまま三つ目のスフィアも貫いた。
ついでに一応デカい奴にも向かわせてみるが、削ることは出来ても決定打にはならなかった。やはり俺は使えるというだけで錬度は低いからな。あれぐらいの魔力密度を持ったデカブツには効果が薄いみたいだ。
そうこうしている間にスナイプが砲撃を食らって消えた。まあ残しておいても使い道はなかったし別にいいけど。
さて、小うるさい奴はいなくなったので、もう俺は隠れる必要はない。あとは鈍重なデカ物君だけだ。
さっきから観察するに、どうにもあの砲撃は連劇が出来るわけではないようだ。となればこそ、邪魔な小型の奴らを消したのだから。そして、一撃しか能がない的がデカいだけの奴に俺が負けるはずもない。とはいえ油断というものはおそろいいので、俺は正面からではなく、少し横に移動してから飛び出すことにする。
そして、俺のその判断は考えてもいなかった最高の結果をもたらした。
「ん、なんだあれ」
横に移動しつつ奴さんを観察していると、そのスフィアのすぐ裏側に何かあるのが見えてきた。本当にすぐ傍にあるのでほとんど真横に移動するまでまったく気がつかなかった。もう少し動いてみると、ようやくそれが何なのかがわかる。そして同時に、このラスボスのクリア条件を俺は知ったのだ。
「赤いスフィア!? ということは……目的はコイツを倒すことじゃなくて赤いのの確保か!」
この訓練、青と紫は破壊しろと最初に言われている。ということは、これは仮想敵だと仮定できる。では赤いスフィアはというと、これは確保しろと言われている。つまり、赤は恐らく要救助者あるいは人質を表していると推測できる。ここまで来たら答えは簡単だ。最も優先しなければならないのは人命である。子供でもわかる簡単なルールだ。
となれば、今優先されるべきは赤いスフィアの確保。紫のでかいのはまあ倒すのがベストだろうが、極端に言ってしまえばどうでもいいだろう。
あ、危なかった。気づくのが遅れていたら、問答無用でデカブツをぶっ壊しているところだった。赤いスフィアを巻き込んで。よかった、回り込むことにして……。
しかしそうなると、残りのスフィアが四つというあのエイミィの言葉は嘘だったということになるな。いや、残りの仮想敵スフィアは四つと考えれば正しいか。それとも、間違った情報に惑わされずに自己判断が出来るかを試しているんだろうか。だとすれば、途中で通信が途切れたのも、一人で考えさせるためということで納得できなくはないんだが。
まあそれらを考察するのはこれが終わってからでいいだろう。とりあえずはまず赤いスフィアの確保が最優先。俺は木の陰でふわりと浮かび上がると、足の裏に円盤を仕込み、体勢を地面に平行にする。もちろん頭が向いている場所はデカ物の後ろである。
「ブースト、ファイア!」
≪Higher Boost≫
急加速が俺の身体にかかり、高速で俺の身体は赤いスフィアに迫る。デカ物が反応する時間なんてありはしない。俺は赤いスフィアを胸に抱えると、ついでとばかりにS2Uの先端を紫のスフィアに当てた。
「ブレイクインパルス」
≪Break Impulse≫
言葉の後、強烈な閃光とともに紫のスフィアは消し飛んだ。
相手の固有振動数を割り出し、それに合わせたエネルギーを送ることで相手を破壊する近接魔法、ブレイクインパルス。原作でクロノも確か使っていたやつだが、近接魔法だったので俺も覚えた。ちなみにこの技、相手の固有振動数を割り出すために一瞬だけ停止時間があるのだが、それもここまで鈍重な相手なら何も問題はない。物理的な相手でなくても、魔力にだって固有の波動なんかは存在するのでこの技はわりと有効な手だったりする。
さて、とりあえずこれでスフィア群も殲滅、赤いスフィアも確保した。とりあえず、当初の規定通りにエイミィに連絡を入れる。もしこれが俺たち特殊士官生に咄嗟での自己判断を促すものだったとしたら、この段階で通信は回復しているはずだからだ。
「こちらクロノ。赤いスフィアを確保した。座標はZエリアの8-7だ。確認頼む」
数瞬待ち、やはり通信がつながった。
『――こちらエイミィ。了解しました。赤いスフィアの確保と全敵スフィアの殲滅を確認。このままコースに沿ってZエリアを抜けてください』
「了解。……正直少し驚いたぞ。あとでなんか奢れ」
『う……こ、こっちも指示通りにやっただけなんだけど……』
「うっさい。年下の男の身体をさんざん酷使させやがって。対価を要求する」
『ち、ちょっと言い方が悪いよそれ! それに私だって――は、い、いえすみません!』
どうやら後ろから教官に注意されたらしい。俺にも何か言われる前に逃げとくか。
「それではこれよりゴールに向かいます。では」
『あ、ち、ちょっとクロノく』
ぷつん。
エイミィが何か言っていたが、俺はためらいなく通信を切った。今頃はきっと教官に注意を受けているだろう。私語厳禁、ってな感じに。
だがまあその程度で済むんだから感謝してほしいぐらいだ。なにしろ、ああしてすぐにこちらからの通信に応えたということは、俺が必死こいて突然つながらなくなった通信やスフィア相手に頑張っていた頃、エイミィたちはモニター越しにそれを見ていたということである。こっちが苦労している時に向こうはそれというのはなんか納得がいかないので、これぐらいの仕返しは勘弁してほしい。まあ、奢りの件は本当に要求するつもりだけどな。
さて、となれば何を奢ってもらうべきか。俺はそんなことを考えつつ、もはや敵のいないコースをさっきまでよりも緩やかなスピードで飛び、ゴールへと向かう。
そしてZエリアも間もなく抜けるというゴール直前。俺はふいに森の木々の葉が揺れるのを見た。風が原因ではない。完全な無風であったにもかかわらず、葉はゆらゆらと揺れていた。
「……ん、地震か?」
それ以外には考えられない。まあ、地震程度で騒ぐほどでもない。かつては地震大国とまで言われた日本に住んでいた身としては、大して珍しいものでもないし。
俺にとって小さな地震程度、騒ぐことでもない。俺は身体にくっつけた円盤から魔力を解放し、さっさとゴールに向かう。そして、ほぼ最高の結果を残して今日の合同訓練を終えた。
■
――その森を抜けて数キロ離れた先。そこに静かに存在している名もなき渓谷。その剥き出しとなっている岩肌が武骨な威圧感を見る方に感じさせる。
……と、不意に小石が上から落ちてくる。ぱらぱらと降るそれは、明らかに異常だ。誰の手も加わっていないのに勝手に落ちてくるのだから。
もしここに誰かがいて岩肌に手を当てることができればその理由はわかっただろう。その渓谷がごく僅かながら震えているという事実に。
その場所を中心にほんの少しだけ揺れている地面。だが一番近い町までその揺れは届かない。それはどこかおかしな地震だった。なにしろ一番近い街は森の反対側にほんの十キロ進んだ先だ。十キロ程度なら震度一であろうとも揺れは共感できるものだ。だが、町の住人は地震に気づかない。
ぱら、ぱら。
小石が重力に従って落ちる。落ちる過程で岩肌にぶつかったそれは、微かな音を立てて、砕け散った。
※ネタなしっす。
あとがき
100万Hitだというのに何も考えていなかったので、急遽書きあげました。
そのせいかネタはナシ。さらにちょい短い。楽しみにしていた方、申し訳ない。
……どうか、これで100万Hitの件は許してくださいm(_ _)m
姉さん、事件です(違
最後の思わせぶりっぽい所ですね。今後それがどういう結果になるのか、楽しみにしていてください^^
>犬吉さん
ありがとうございます!
気がつけばこんなことになっていて、私自身驚くばかりですよw
まつろわの方も少しずつ事態が動き出しています。士官学校編、まだまだ続きます^^
いつものように小説サイトを回っていたら、ゆきいわ様のサイトが100万hitをしていて驚きました。
これからも、ヨロシクお願いします!
しつこいですが、愚者の更新がありましたよ!
泣きました!
ありがとうございます!
まさか100万までいくとは……HP開設から四年。ついにやっちゃったなぁ、って感じですw
こちらこそこれからもどうかよろしくです!
――んで、愚者やべえ!
鳥肌が立ちましたよ! MA☆JI☆DE!!
いいなあ、THE FOOL。「聖なるかな」やろうかなぁ。
でも浩二がいないんだよなぁ。じゃあイラネ(´Д`)
……とにかく、『THE FOOL』最高ですよね!!
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