「きゃーっ、なにこれなにこれ! こんな小さい中にAIが組み込まれてるの? しかも会話可能なほどの高性能AIを! そんなことができる人間がこの私以外にいたなんてねぇ。それにしてもこれ本当に宝石? 向こう側が透けて見えないってことは、やっぱり機械なのよね? 表面をイミテーションで覆ってるのか、だとしたら中が見えないのはおかしいわよね。光の屈折率を変えているのかしら。マジックガラスみたいなものなのかな、ねえ?」
「さ、さあ……わたしにはちょっと……」
「えー、だってこれ菜乃葉ちゃんのでしょ?」
「もらいものですし……」
そうなんだー、なんて言いながら再び手の中の赤い宝石をしげしげと観察し始める忍。追及の手が迫らなかったことにほっと安堵していると、そんな菜乃葉に相棒から声がかかる。
『……Master. Please hel――』
「おっまた喋った! こっちは話しかけてないのに喋るってことは、自分で思考できる自律型なんだぁ。こんな数センチの中にどれだけの技術が詰まってるのかしら。興味深いわ~」
そんな声もすぐさま忍の声に遮られることとなり、さすがの菜乃葉も引きつった笑みを浮かべるしかない。
すぐさま今度は頭の中に声が響く。
≪Please help me , Master…≫
<ごめんレイジングハート……が、頑張って!>
機械音声のはずだが、非常に疲れきった様子のレイジングハートに、菜乃葉は握りこぶしを作ってせめてもの応援を送る。ああいった手合いに話しかけるのは自殺行為、興味がほかに移るまでは放っておくのが一番いいのだと、菜乃葉はその鋭い直感で感じ取っていた。
だからといって、相棒を生贄に捧げた事実に違いはないのだが。
≪……All right……≫
最後に返ってきたレイジングハートの声は、とても細々としたものだった。そんな反応に内心で謝りつつ、菜乃葉は目の前の少女に顔を向ける。
「えっと、菜乃葉さん。すみません、いきなり……」
「あ、いえいえ。わたしもお二人には会ってみたいなーと思ってましたし」
すっかりレイジングハートにご執心になっている忍を見やって、一緒に高町家を訪れた那美が溜め息まじりに申し訳なさそうにしている。それを見てとって、菜乃葉は那美の心情を慮るようにやさしく声をかけた。
その言葉を受けて、那美も安心したように笑みを見せる。
「よかった……。菜乃葉さんって、本当に美由希さんたちが言うみたいにお優しいんですね」
にっこり柔らかい笑みとともに言われた言葉に、菜乃葉は少し頬を染めた。
「い、いえそんな……。神咲さんこそ……」
「あ、私のことは那美と呼んでください。皆さん、そう呼びますので」
「じゃあ、わたしのほうが年下ですし、敬語はいらないですよ?」
「いえ、敬語はもう癖というか……ご迷惑でなければ、このままではいけませんか?」
「そういうことなら。それじゃあ、改めてよろしくお願いします那美さん」
「はい、菜乃葉さん」
互いに小さく頭を下げ合って、顔を上げると双方の顔を見合って微笑む。休日のうららかな午後にふさわしい穏やかな雰囲気だった。癒し系、と言いなおしてもいいかもしれない。
とはいえ、そのBGMはいただけたものではないが。
「うーん、やっぱり外見からだけじゃ想像も出来ないなぁ。バラしたいところだけど、そういう接ぎ目も見えないし……どうやって作ったんだろうこれ? むむむ、これは私に対する挑戦と見たわ。絶対にこれの秘密を暴いて見せるわ! じっちゃんの名に懸けて!」
なにやらレイジングハート片手に一人で燃えている忍を見て、菜乃葉と那美は同時にため息を吐く。穏やかな午後は、まだ遠いらしかった。
「……忍さん、止めてきますね」
「……お願いします」
言うと、那美は立ち上がって忍のほうに向っていき、なにやら宥めるように話しかけている。それを見やってから、菜乃葉は相棒に念話を飛ばした。
<お疲れ様、レイジングハート>
≪……Yes , indeed.(……ええ、まったくです)≫
相棒から返ってきた痛烈な皮肉に、菜乃葉は平身低頭で謝り倒すのだった。
それから一分後、ようやく那美の説得に応じたのか、忍が菜乃葉のほうに寄ってきた。といっても、所詮は民家のリビング。わずか数歩で埋まるほどの距離しかなかったわけだが。
「あはは、いやーごめんね急に。私、こういう機械系ってすごく興味があってね。どうにもこういうものを見ると周りが見えなくなっちゃうみたいなのよ」
明るく笑いながら言う忍に、菜乃葉は相槌を打ちながら微笑む。
もしここに恭也がいたとしたら、その言葉に大いに頷き、そのせいで周りが被る被害を思って溜め息をこぼすだろう。だが、いま恭也は部屋に下がっていていない。なんでも美由希の鍛錬メニューに少々手を加えたいということらしい。
忍と那美にしてみれば、期せずして件の菜乃葉とサシで話せる状況となったわけで、今だけは恭也がいないことを感謝しているぐらいだった。
ちなみに美由希たち他の高町家の住人は、三人そろってお買い物。桃子となのはは翠屋だ。まさしく、今は二人にとって菜乃葉という人物を知る好機なのだった。
「あ、そうだ。ありがと、これ返すわ。今度分解させてね」
「絶対ダメです」
レイジングハートを受け取りながら真顔で即座に却下した菜乃葉に、忍は不満そうな顔を見せる。しかし、菜乃葉にしてみれば大事な相棒を分解などされてはたまらない。ここにはデバイスの修理などを行う技術は存在していないのだ。壊されたらそれでお終いだ。それは何が何でも避けなければならないことだった。
「忍さん」
「ぶー。わかったわよー」
那美の窘める声に、忍は子供のように唇をとがらせつつも、一応は了解の意を示す。
そんな美人と言って差し支えない忍の外見からは想像できない幼い仕草に、菜乃葉は苦笑するとともに自分に素直な人だなと好ましく思うのだった。
自分に素直すぎるのも考えもの。それが彼女をよく知る人たちの総意であることを菜乃葉は知らない。
「あ、そうそう。さっき名前は伝えたと思うけど、私のことは忍でいいわよ。名字で呼ばれるのって、何か慣れないのよね」
「あ、はい。わかりました、忍さん」
「ん、よろしい」
よくできました、とばかりに笑う忍につられて菜乃葉も微笑む。そんな二人を見て、那美も安心したのか笑顔を見せた。美少女三人が暖かい日差しを受けながら笑い合う姿。それはとても絵になる光景であった。惜しむらくは、ここに第三者がいないことだろう。いたとしても、高町家の住人は今さら気にしないと思うが。なにしろ、全員レベルが高いのだ。まさに今さらである。
そんな中、ふいに忍は表情を改めて、菜乃葉を見る。菜乃葉も忍の様子を見て、少し訝しみながらも気持ち居住まいを正した。那美も同じく忍の隣で菜乃葉を見つめる。
「――それで、菜乃葉ちゃん。恭也の知り合いって聞いてるんだけど……そこらへん、詳しく教えてくれない?」
「あの、別に菜乃葉さんのことを探ってるとか、そんなんじゃないんです。ただ、もっと仲良くなりたいですし、何か事情がおありみたいですから、何か力になれることもあるかもと思って……」
「う……言葉が足りなかったわね。まあ、そういうことよ。詳しくは知らないけど、偶然再会した恭也に頼らなければいけないほどだったんでしょ? こう見えても面倒見はいいつもりなんだから、何かあったら言っていいわよ。まぁ、敵状視察も含んでるけど」
「し、忍さんっ!」
「だって事実でしょ」
「で、でもですね……」
そのまま何やら言い合い始めた二人を見て、菜乃葉はくすりと小さく笑う。二人の掛け合いが何となく自分の親友二人を思い起こさせたからだ。アリサとすずか。そういえば、任務で三日ほど開けると伝えていたが、既に三日はとうに過ぎている。心配を掛けているかもしれないと思うと、申し訳なく思う。同時に、ちゃんとノートとってくれてるかなぁ、とも思う。意外にちゃっかりしている菜乃葉であった。
それにしても、すずかの姉の忍は落ち着いた大人のイメージがあったが、こちらの忍は随分と明るくパワフルで本当にアリサのようだ。やはり妹がいない影響なのだろうか。あちらを知る菜乃葉は、ついついそんなことを考えてしまった。
那美は那美で、普段は一歩引いていても芯がしっかりしているところがすずかに似ている。忍といい那美といい、そして高町家の皆といい、恭也の周囲にいる人たちは個性的で人がよく優しい人ばかりだ。それはとても得難いことだ。そして同時に恵まれていることだと菜乃葉は思う。
…………同時に、その全員が美人さんなのだが。
「「っ!!」」
びくっと忍と那美の肩が跳ねた。寒気でも感じたのか、腕をさすってもいる。
「な、なんか今すごいプレッシャーを感じたんだけど……」
「お、同じくです」
恭也の周囲には美人な子ばかり。そう考えた時の菜乃葉の感情を感じ取ったらしい。それを見て、菜乃葉もちょっと感情的になっちゃったかも、と一瞬の嫉妬を忘れることにした。
なんとなく和らいだ空気の中で不思議そうにしている二人を前に、菜乃葉は口を開く。
「えーっと、わたしと恭也くんのことですよね。じゃあ、わたしたちが幼なじみだってことからお話しましょうか」
「あ、うん。じゃあそこから」
「あ、お願いします」
菜乃葉が話し出したことで、さっきの寒気などの違和感については気にしないことにしたらしい。二人は真剣に菜乃葉の話を聞く態勢をとっていた。
それから菜乃葉が話したのは、初日に高町家の面々に話したこととそう大して変わらない内容だった。ただあの日の話が終わった後、二人はもう少し設定を煮詰める必要があると思って細かいところまで話し合ったので、多少の脚色はされていたが。
そして、それらの話を聞き終わった二人の反応はというと。
忍は菜乃葉の親類であるにも関わらず向こうで菜乃葉のことを助けようとしなかった架空の親族に憤りを感じるとともに、そこから自力でここまで来た菜乃葉に感嘆しており。那美は涙ぐんで菜乃葉の境遇に共感しているようだった。感受性が強いのだろう。大変だったんですね~、と目を潤ませるので菜乃葉は嘘をついている罪悪感からか非常に居心地の悪い思いをしていたりした。
とりあえずまあ、幼いころの出会いから菜乃葉が今に至るまでの過程はこれで二人も理解したはず。それが脚色された偽物のストーリーだったとしても、二人はそれを嘘だと否定する材料がないのだから、真実として受け入れてくれるはずだと菜乃葉は思っていた。
そして実際に、二人はそれを事実として受け止めたのだった。
「……まあ、そんな感じで。桃子さんの好意もあって、ここに住まわせてもらっているんです」
「なるほどねぇ……。苦労してるのね、あなたも」
「うぅ~、菜乃葉さん大変だったんですねぇ」
しきりに菜乃葉の境遇に同情する二人に、菜乃葉は力なく曖昧に笑って、ええまあと言うほかない。さすがに本当のことを言うわけにはいかないし、話しても信じてもらえるとは思えない。菜乃葉はそう思うからだ。これが恭也なら、また違う思いを抱いたかもしれないが。
そしてそんなふうに笑う菜乃葉の姿は、二人には苦労を重ねた薄幸の美少女という風に映った。そして、菜乃葉が年下ということもあり、守ってやりたくもなってくる。どことなくなのはと似ていることもそう感じさせる要因かもしれない。
そこまで考えたところで、忍ははっとして那美を引き寄せると菜乃葉に背を向けて顔を突き合わせた。
(まずいじゃない! 牽制するはずだったのに、同情してどうするのよ!)
(で、ですけど菜乃葉さん、何とか力になってあげたいじゃないですか~……)
未だに少し涙ぐんでいる那美の言葉に、忍はうぐっと言葉を詰まらせる。それは自分も思ったことだったからだ。
本来は菜乃葉を訪ね、恭也との関係を聞き出すとともに自分たちの関係を話して、菜乃葉の反応を見るというのが主題だったのだ。そしてその時に菜乃葉が見せた反応で菜乃葉が恭也に対して抱いている感情を見抜き、必要ならば牽制を、というわけだ。
だからこそまだ菜乃葉の事情を知らない自分たちが来たのだが、絆されてしまっては意味がない。
(た、確かに私も菜乃葉ちゃんのことは助けてあげたいなぁ、とは思ったけど。なのはちゃんにそっくりだし……)
(あ、そうなんですよね。美由希さんたちも言っていましたけど、ホントに似ていますよね)
顔を寄せ合ったまま、二人は菜乃葉に振り返る。菜乃葉はそんな二人に怪訝な表情を浮かべている。
茶色い髪。優しげな目元。顔つき。雰囲気。名前。髪型がサイドポニーであることと年齢が違う点を除けば、まさに彼女らの知るなのはと瓜二つだ。なのはが成長したらこうなると言わんばかりの姿と言ってもいい。
菜乃葉の姿を確認した二人は、再び彼女に背を向けてひそひそと囁き合う。
(――ってゆーか、あれ本人でしょ。未来から来た未来人じゃないでしょうね?)
(さ、さすがにそれは……。でも、そう言われたら信じちゃうぐらいそっくりですよね)
冗談まじりに言うその内容が真実を掠っているとは、さすがの二人も思わないようだ。
(う~……ダメだわ、やっぱり事情を聞いちゃうと。恋敵とはいえ、菜乃葉ちゃんが嫌いってわけじゃないんだし)
(そ、そうですよね。菜乃葉さん、なのはちゃんみたいで可愛いですし……)
そこでぴたりと一瞬静止する二人。
(……ややこしいわね)
(……そ、そうですね)
二人続けて名前を呼ぶと非常に混乱を招きやすいという事実に気が付く忍と那美。だからといって、別にどうということでもないのだが。
(まあ、そこらへんは置いておいて。とりあえず、菜乃葉ちゃんの気持ちだけ確認しておきたいわね、今後の為にも)
(ですね。美由希さんのお話ですと、菜乃葉さんのほうは私たちが恭也さんのことを好きなことは気がついているみたいですけど……。私たちは菜乃葉さんの気持ちをはっきり知ったわけではありませから)
那美が苦笑い気味に言ったことは、高町家で暮らす三人から聞いたことだ。
美由希、レン、晶の三人が恭也に特別な感情を抱いているらしいことに菜乃葉は気付いているらしいということ。他人から鈍いと言われる菜乃葉ではあるが、他人の気持ちを推し量ることぐらいは出来る。でなければ非言語コミュニケーションのとりようがないのだから、少し考えればそれは当然のことだと気付くだろう。だからこそ、菜乃葉は三人の気持ちに気がついた。もっとも、三人があからさまだったというのもあるのだが。
だが、三人がそんな風なのも仕方がないだろう。なにしろ、恭也はこと女性関係に関してはなぜか異常なまでに関心を示さない。自身を低く見積もりすぎていることと、幼い頃からの精神鍛錬や周囲の大人の影響によって精神が発達した子供時代だったことが災いしていることは言うまでもない。
周囲の環境によって一般的な子供のような成長をしてこなかった恭也にとって、周りにいる女子は文化が隔絶している他種族のようなものだった。言っていることは分からないし、何をすればいいのかもわからない。男相手ならばいくらか力技も使いようがあるが、女子相手ではそうもいかない。
そして周囲とそうして壁が出来てしまった原因を、その責任感ゆえに恭也は己のせいだと思い込んだだろう。そしてそう思うことで、恭也は周囲にとって自分はよくない影響を与えていると思い込む。それがまた周囲の理解を妨げる壁となっていく。まさに悪循環だ。恭也の鈍さはそうした環境要因も多大にあるだろう。
それが十九になるまで続いてきたのだから、そりゃ鈍くもなるってなものである。
ここで話を戻そう。つまり、恭也はそこまで鈍い。ということは、並大抵のアプローチでは気がついてもらえない。となれば、あからさまな行為に走るしかなくなるのである。周りからしてみれば一目瞭然とも言えるようなところまで行き着いてしまうのである。
それゆえ、鈍い部類に入る菜乃葉でも気が付くことが出来たのだ。
ちなみに、そんな恭也にどうして菜乃葉は女性として意識されているのか。これもまた簡単だ。まだ恭也が女性に対して一種の壁を構築してしまう前――つまり子供のころに出会い、その時点で恭也が淡い想いを菜乃葉に少なからず抱いていたためだ。さらに言えば周囲の女性との隔絶は、より恭也にとって思い出の少女を意識する機会ともなっていた。
俺の周りの女子はこうだが、しかしあの時のあの子は――、といった具合に。そして恭也にとって菜乃葉は他の女性とは異なる意味を持つ女性として心に残り続けたのである。初恋は正しく初恋のまま。色あせることなくそれが生き続けた理由は、事あるごとにそうして思い出していたからに他ならない。つまり、菜乃葉はこの上ないタイミングで恭也に出会ったのだ。それが今もこうして強く影響している。
とはいえ、恭也も菜乃葉もそんなことを意識しているはずもないのだが。まあ、理屈をつけたところで結局、二人はなるようになっているということである。
さて、さらに話を戻して忍と那美の話。とりあえず菜乃葉の気持ちだけ確認しようということで一致したところで、くるりと菜乃葉の方を振り返る。
菜乃葉は二人の視線の先でレイジングハートを片手に目を閉じていた。二人がずっと背を向けていたのでレイジングハートとの念話に集中していたのだ。ようするに暇だったのである。
「あ、あの~菜乃葉さん」
「……あ、はい。なんですか?」
那美に話しかけられ、菜乃葉は念話を終わらせて彼女に向きなおる。その横で忍が真面目な顔つきで菜乃葉を見ていた。
「菜乃葉ちゃん、単刀直入に聞くわ。あなた、恭也のこと好き?」
「ちょ、ちょっと忍さん。いきなりそんな……」
前置きも何もなくいきなり本題を突きつけた忍の物言いに、性格的に慎重な那美が反射的に待ったをかける。
だが、忍は逆に那美に問いかける。
「だって、遠まわしに言ったって結局聞きたいことは一緒なんだから。それならスパッと言っちゃったほうがお互いにスッキリしていいじゃない」
「そ、それはそうかもしれませんけど~」
那美とて別に反対なわけじゃない。ただ、性格がこういう強硬な態度に向いていないだけなのだ。忍もそれがわかっているから、那美にちゃんと説明もする。説明すれば那美もちゃんと納得してくれると知っているのだ。
那美にそう聞かせると、忍は改めて菜乃葉に問う。
「で、どうなの? 私たちが恭也のことを好きなのは知ってると思うけど」
それに対して頷き、知っていると示す菜乃葉。だが、それだけではなく菜乃葉は即座に口を開いた。
「恭也くんのこと、好きですよわたしも」
即答ではっきりと口にしたことに、忍と那美は驚いた。と同時に、実は菜乃葉も自分のことながら驚いていた。
確かに自分の中にそんな気持ちがあるのは自覚していたが、はっきり口に出せるほど確固とした気持ちとして自分の中で育っているとは思っていなかったのである。
恋敵ともいえる忍からの問いかけ。菜乃葉の心には、恭也への気持ちやはっきり気持ちを口にする忍への嫉妬、自分の気持ちへの自覚、恋というものへの知識、思い出という過去など、様々なものが一瞬で去来した。
ゆえに菜乃葉の心は混乱した。というより、多くの情報が一気に混在して混沌としたと言うべきか。どうすればいいのか。自分はどう答えるべきなのか。混沌とした心では、考え抜いた末の回答は出来そうもなかった。
だが、だからこそ菜乃葉は意識することなく、混沌の中から「自分の真実の気持ち」を抜きだすことが出来た。例えるなら、インターネット上で「自分の真実の気持ち」というキーワードで検索した結果が口をついて出た言葉だったのだ。思考が働かないから、検索して出てきた気持ちはストレートに口から出た。
すなわち、「恭也のことが好きだ」という真実の気持ちが。
だから、菜乃葉は驚くとともにひどく納得している自分を感じていた。ああ、自分はやっぱりそうだったのか、と。自覚があった想いであったためか抵抗もなく受け入れることが出来ていた。
同じく、やっぱりねという面持ちで頷いている忍と那美。二人にとって、菜乃葉が恭也のことを好いているだろうことは又聞きした話だけであったが、ほぼ決定事項のようなものだった。その確認の意味での納得であった。
互いに納得したように頷き合う三人。過程こそ違えど、互いに得心がいっているという事実は、奇妙な連帯感のようなものを三人に感じさせていた。
「……うん。わたし、恭也くんのこと好きです」
「まあねぇ。そうだろうとは思ってたわ。いま初めて会ったんだけど」
「お話はよく聞いていましたし。私も、やっぱり、って感じですね」
その連帯感が感じさせるままに、微笑み合う三人。一般的に言われる恋敵同士が向かい合っているようなシーンではない。だが、それがまた常識はずれな彼女たちらしかった。
微かに笑みを残したまま向かい合う三人は、誰からともなく同じような言葉を口にする。今日会ったばかりとは思えないほどの呼吸で、三人の言葉は一つの言葉になる。
「……ま、なんというか」
「同じ人を好きな同士ですし」
「えっと、これからよろしくお願いします?」
最後に菜乃葉が疑問形で締めて、二人の笑いを誘った。それと同じように菜乃葉も笑う。
三人の美少女達が笑い合う光景は見る者の心を洗うように美しい。これがまさか、一人の男を取り合う恋敵同士であるとは、恐らく誰も思わないだろう程、それは穏やかな光景であった。
「きょう×なの」なのに恭也出てこないw
更新乙です!
待っていましたが、冥王?……フラグが立ちました?
下の記事に書き込みする前にきょう×なのが来た為、THE FOOLの話題を……
とうとう、終わってしまいましたね……
すごく、すごく物悲しいです。
先ほど、学校から帰ってきて……もう一度全て読み直しましたよ。
モニターの前が見えなくなりましたよ……涙で……
いつか、感想のところでPVはトップ!ならば感想数も!という動きがありましたが、
銀凡伝には勝てませんでしたね……
自分もいつかPINO様のような作家になりたいな……弱い主人公で頑張る姿を書けるような!
そして、力量が上がったらTHE FOOLの三次創作を!
今回も楽しませていただきました。
今回は冥王様の自分の気持ちの再確認とか、忍と那美の宣戦布告?とかありましたが、それでも殺伐とした雰囲気にならないところが、あのヒロイン達らしいというか何というか。
横の繋がりが実に強くて、良い関係を築いている娘達ですからねぇ。
今後、どう話が展開していくのか、楽しみに待ってます。
まずは……ドンマイ、レイジングハート(笑) 微妙に人間くさくなってきたのは、周りの人間の影響でしょうか?w
同じ思い人の集いでも、殺伐とした状況にならないのは、やはりこの人達ならでは。終始ほのぼのしていて良かったですw ……一部嫉妬から冥王の空気が漏れてましたがwww
この会合が互いに良い影響を与えて、皆が幸せになれるといいですね~。勿論恭也となのはのカップリングが成立する前提で(笑)
次回も楽しみに待っています。それでは~。
二人はどんな気配を感じたのやらw
ようやくはっきりとなのはが自分の気持ちを口にしまして
これからどうなっていくのか楽しみです。
ぜひとも甘甘な話でモニター越しに悶えさせてくださいwww
とりあえずは、レイジングハートはお疲れ様です(笑。ある意味では命の危険でしたからねぇ……(苦笑。
今回は、恭也が出ていませんが、そのお陰で女性同士の話題が出来ているような感じじゃないかな~と思います。
次の展開もどうなっていくのか楽しみです。
久々の更新ですみません;;
いきなりのTHE FOOLネタw
でも、本当にあの作品は面白いですよね。
何回読んでも飽きるということがない作品というのは稀有だと思います。
あんなふうに熱い作品を一度は書いてみたいものです。「まつろわ」のほうでクロノくんがそんなキャラになってくれればなぁ。無理だけど。
三次創作、もしいいならやってみたいですよね。その時はお互いに楽しい作品を作りましょうね~^^
>スケープゴートさん
誤字報告ありがとうございます。
早速直してきました。
とらはキャラで修羅場っていうのがあまり想像できない私です。どうしてもまったり系というか、そんな感じになってしまうんですよねぇ^^;
>たのじさん
まつろわの方は置いておいて、こっちを書いてました。思い浮かぶと早いですね^^
今回のお話は、菜乃葉とまだ会っていない忍と那美の邂逅が主題。菜乃葉の気持ちの自覚は副産物ですね。
でもこれでまた物語が進むと思います。
早く恭也とくっつけよなぁ(ぉ
>ziziさん
大変お待たせいたしましたw
レイハさんはどこか腹黒いおちゃめさんなのです。やっぱり菜乃葉の影響だと思いますよ?
MEI-O様も少々顔をのぞかせましたが、基本はまったりのんびりのお話でした。やっぱり恋愛っていうのも書いてて面白いですね。
皆がどうなっていくのか、それはまた次回!
とりあえず今話も楽しんでもらえたようでよかったです。ではまた次話で~
>犬吉さん
もちろん冥王様のですw
菜乃葉は気持ちを自覚。これから恭也に対してどういう対応をしていくのか。そして恭也の気持ち、皆の動向は?
甘甘といくかはわかりませんが、いつものように書かせていただきますw
>FINさん
お待たせしたようで、申し訳ない^^;
レイハさんはまさに九死に一生だったのですw この世界で壊れたらもうそれっきりですからねぇ。そりゃ必死にもなります(笑
女の子同士のお話。まあ、たまにはこういうのがあってもいいかな、と。
次回で恭也は出るのか!? そこらへんもまだ未定ということで~w
今回はなのはと忍、那美の会話でしたがこの3人の関係をなのはとアリサ、すずかの3人に照らし合わせるのは確かにそっくりで良かったです
今後の展開に期待です。頑張ってください
いやあ、お待たせして申し訳ないことでした^^;
アリサとすずかのくだりは、書いていてふと似てるかも、と思ったのでそのまま書いてみたところです。
なんとなく似てますよね、キャラ的に。
今後どうなるのか、どうかお待ちください。それでは~w
バラしたいところだけど、そういう継ぎ目も見えないし
ですか?
つか、何故レイハさんが忍の魔の手に掛かったのか?
なのはさんお留守番中に、庭でレイハさんとお話してたら
迂闊にも庭から進入してきた忍たちに強襲されたとかですか(w
>でなければ非言語コミュニケーションのとりようがないのだから
肉体言語でのコミュニケーションも完璧ですしね なのはさん(w
報告ありがとうございます。早速直しておきました。
ちなみに、なぜレイハさんの存在が忍らにバレたのか?
答えは単純、ノリです。(爆
つまるところ、ご都合主義です。ご都合万歳。かのメカニックも言っています。「ご都合主義だと笑わば笑え。だが見よ、見よこの燃える展開!」と。
要するに盛り上がれば何でもいいのです。
……どうかそういうことで納得してください。はい^^;
そして非言語の件。お話=砲撃の方程式ですからね、なのははw
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