なのはStrikerS、ついに終わってしまいました・・・
最終話を見終えて、ついついレポートほったらかしで「きょう×なの」を書いてしまいました^^;
なのはって恐ろしいなあ・・・^^
と、いうわけで「きょう×なの」最新話です
勢いで書いたせいか、微妙に長くなってます
では、続きを見るから先へどうぞ~
恭也は人生でこれまでに経験したことがないぐらいに激しく混乱していた。
同時に動揺もしていたし、テンパってもいる。……あと、ほんのちょっと嬉しかったりもした。
その理由は恭也の現状を見ればすぐにわかるのだが……。
早い話、恭也はなのはに抱きつかれていた。
「………………」
「あ、あー……な、なのは?」
しかし抱きついてきたなのははそれ以上何も言うことはなく、そのことがさらに恭也を混乱させている。
はっきり言って、抱きつかれるのは嬉しい。恭也も男だ。可愛い女の子との接触を嫌がる理由がない。
しかし、ここで問題なのが恭也はその女の子のことが好きであるという点だ。
いくら鉄の意志を持つ恭也であっても、年頃の男の子なのだ。
ぶっちゃけ、ずっとこの体勢で我慢し続ける自信がなかった。
「……っと……た……」
「? なのは、もう少し大きな声で……」
何事か呟いたなのはに少し耳を近づけながら、恭也が言う。
そのかいもあってか、再び紡がれた言葉は聞き取ることができた。
「……やっと、会えた……」
「なのは……」
万感の思いのこもったなのはの言葉に、恭也も感慨深げに彼女の名前を呼ぶ。
そう思っているのは恭也も同じだった。
なにしろ、初めて好きになった相手で、今でも忘れられなかった相手なのだ。
再会の喜びは言葉で言い表せないほどに、心の中で渦巻いている。
「俺も、もう一度会えて嬉しい。なのは……」
「恭也くん……」
なのはは幾分うるんだ目で恭也を見る。
なのはにしてみても、恭也は長い間ずっと想い続けてきた相手で、この時空の成り立ちを知ってからは会えないものと半ば諦めていたことでもあったのだ。
“平行世界とは、原則として異なる時空においてのみ存在するものである可能性が高い”
これがミッドチルダでの平行世界に関する考え方だ。根拠は、数多くの次元世界を管理する管理局であっても、いまだにひとつとして平行世界を発見できた記録が存在しないからだ。
ゆえに、数学的には存在を証明されていても、平行世界については半ば机上の空論と化していた。
だが、数字の上でとはいえ存在が確認されているのだから、一応は建前として理屈が必要だった。それがすなわち、『発見できていないのは、平行世界とは我々が干渉できるこの時空とはまったく別種の時空において存在しているのだ』というものだったのだ。
その別の時空という考え自体が胡散臭いこときわまりないのだが、とりあえずはそういうことで決着がついたらしい。
ようするに、あるんだろうけど確認が取れないんじゃしょうがないじゃん、ということである。
しかし、なのははそれを知ったとき目の前が暗くなっていくのを感じた。
数多の次元を行き来する時空管理局であっても、不可能であるということは、もう二度と恭也とは会えないということと同義だったからである。
それが、突然の事故が原因とはいえ今こうして再会がかなったのだ。
それがどれだけ天文学的な確率なのかなのはには見当もつかないが、今はこの神の采配に感謝したい気分だった。
こうして、ずっと想い続けた人の腕の中にいることのできる奇跡を。
「きょうや、くん……」
うるんだ目のまま、なのはは下から恭也の顔を見上げる。
整った顔つきに、強い意志を感じさせる力強い瞳。自分よりも十センチ以上は背の高い、厚い胸板からわかる鍛えられた体躯。
あのとき恋した少年は、かっこいい男性へと成長していた。
いまだくすぶる恋心を抱いてきたなのはは、そんな恭也の姿を確認するだけで胸が高鳴るのを感じた。
優しく自分を見つめているその視線に目を合わせ、心の中で意を決して爪先を伸ばそうと身体を緊張させた直後――、
「そ、そういえばなぜ急に此処に来れたんだ?」
恭也はあからさまに視線をそらして話題転換を図った。
それにむっとなるのは、当然なのはである。
いい雰囲気が漂い、自分の気持ちも再確認して、大きな決心とともに行動しようとした矢先にこの仕打ちだ。
機嫌が悪くなるのも当然というものである。
それどころか、恭也にとって自分はただの懐かしい友達にすぎないのだろうかとも考えてしまう。
実際は全くそんなことはなく、そういった経験がない恭也はただ困惑して思わずやってしまっただけなのだが、そんなことをなのはが知る由もない。
ちなみにそこら辺が恭也が鈍いとか唐変木とか言われる理由でもあった。
いくらか落ち込んだ気持ちと、恭也を責める気持ちをなんとか抑え込んで、なのはは恭也の腕の中からそっと離れた。
「……うん。じゃあ、話すよ。恭也くん」
「あ、ああ」
しかし完全には抑えきれなかったようで、なのははじとーっと恭也を睨みつけていた。
それに冷や汗を流してしまうのは、まあ……自業自得だろう。
「それじゃあ、まずは今のわたしの立場から説明するよ。
わたしは、時空管理局本局武装隊航空戦技教導隊所属、高町なのは二等空尉。主な仕事は、武装局員の指導と非常時における武力鎮圧……ああ、捜索指定遺失物の確保もあったかな。これが今のわたしの立場だよ」
「ち、ちょっと待ってくれ」
なのはの早口言葉のような自己紹介に、恭也はたまらず待ったをかけた。
「じくう……なんとかとは何だ? それに、武装隊? 聞くからに何か物騒な感じがするんだが……」
「まあ……物騒ではあるかも。ようするに、警察とか軍隊みたいな治安維持組織に所属しているわけだし」
「なにっ!?」
軍と聞いて、さすがの恭也も驚きを隠せない。
どう聞いたって危険極まりないもののような気がする。身も蓋もない言い方をしてしまえば、軍とは力を以て敵を潰す職業である。
もちろん、その仕事のおかげで国の平和や人民の未来が守られていることは事実であるし、多くの人を守る矢面に立つことは立派と言えなくもない。
しかし、目の前の少女はどう考えても銃やらミサイルやら飛び交う戦場に似合っているとは言い難く、さらには軍にいるということはいつ死んでもおかしくないということではないのだろうか。日本の自衛隊のような組織は世界では稀なのだ。
(向こうの俺は、なぜなのはを止めなかったんだ!)
会ったこともない平行世界(恭也はそう考えている)の自分に怒鳴り散らしてやりたい恭也だった。
「まあまあ、落ち着いて恭也くん。管理局は恭也くんが考えてるようなところじゃないし、わたしたちが使う武器は……この世界での現代兵器とは別物だしね」
「? それは、いったい……」
「それじゃあ、簡単に説明しようか。管理局と、この時空に広がる次元世界のことを……」
そして、なのはは語り聞かせるように恭也に話す。
自分の使う力、魔法とその特性。
世界というものは一つではなく、それは宇宙よりも大きな規模で数多存在しており、それぞれの世界にそれぞれ独自の文化や技術が存在していること。
そして、中には世界を渡ったり破壊してしまう技術もあり、それを用いれば多くの世界が滅びてしまう危険性があること。
そうした事件を防ぐために組織された、時空管理局のこと。
そしてその扱う魔法という技術と、事件や危機の鎮圧を組織の大きな役割としているため、この世界の軍のように死と隣り合わせということはまずないこと。
もちろん、殺傷設定で攻撃される場合もあるし、戦場ではやはり死ぬこともあり得る。が、非殺傷設定の存在や管理局という大きなバックアップもあってその可能性は近年では減っていること。
そして、恭也と別れた後に自分がたどった道をかいつまんで説明し、最後になのははなぜ自分がここに再び来れたのかを自分の予想を交えて話す。
「管理局の大きな任務に、事件の鎮圧のほかにもう一つあるの。……わかるよね?」
「ああ。さっき言っていた、ジュエルシードや闇の書といったものが関係しているんだろう」
「うん。もう一つの重要な仕事は、そうした大きな力を持つ古代の遺産――ロストロギアを回収して管理保管すること。ロストロギアには、危険なものからそうでないものまで多くあるけど、それはどれもが現代では再現不可能なオーバーテクノロジーなの。
危険なロストロギアは、一つだけでいくつもの世界を滅ぼすことすら可能にすることもある。だから、それの早期発見と確保はわたしたち前線の魔導師に部署関係なく課されている重要任務でもあるんだ」
最近ではそれよりも自分の縄張りにこだわる魔導師も多いんだけどね、となのはは苦笑する。
それは恭也もわかる。要するに、余計なことに手を出して責任が及ぶのが怖いということだろう。組織である以上、それは避けられない現実であるのかもしれなかった。
「それで、今回のことの原因なんだけど。わたしは今回ある案件を担当していたの。ロストロギアの発見を確認、ただちにそれを回収せよ……っていう、まあよくあることだったんだけどね」
「よくあるのか?」
「うんまあ。わたしがもといたところはロストロギア関連の事件を担当することが多かったから」
ジュエルシードに闇の書。一年で二つのロストロギア事件に巻き込まれ、それをいずれもほぼ理想の形で終結させたロストロギア事件の救世主。戦艦アースラ。
今でこそ艦長も変わり、皆それぞれの職場に散って行ったが、その偉業は未だに語り継がれている。
そしてそのクルーの一人であったなのはは、その高い魔力資質も手伝ってかよくこういった案件を回されることがあるのだった。
「それで、今回のロストロギアは攻撃能力のないものであることは判っていたから、わたしは単独で赴いたの。まあ、後方に部隊はいたんだけどね」
「まて。そこまでわかっているなら、なぜその時点で確保しなかったんだ?」
恭也から当たり前といえば当たり前の質問をされ、なのはもため息交じりに口を開く。
「……発見したの、陸の人たちだったんだけど、空と陸って仲が悪いの。それで、自分たちがもしロストロギアを下手に刺激してはいけない。ここは経験のある方に頼むべき、って言って聞かなくて、空で名高い高町二等空尉なら安心でしょう、ってことで経験者であるわたしに回されたの」
「……最低だな」
「言わないで……。なんだかすごく情けない気持ちになるから……」
本当に身内の恥だと思っているのか、なのはの溜め息は重い。
これなら、はやてが色々と考えるのも無理はない、となのはは思うのだった。
「……まあ、そんなわけでわたしはその任務にあたったんだけど……。そのロストロギア、ある意味ではすごく危険なものだったの」
真剣身を帯びた声に、恭也も思わず身体に力を入れた。
「攻撃能力はゼロ。自律移動も不可能。知能の存在も確認されず。危険性は限りなく低いロストロギア。……けど、そのロストロギアが持つ唯一の機能が問題だった」
「それが、今回のことに?」
恭也の言葉に、なのはは首肯した。
「その機能とは、恐らくあらゆる場所への転送を可能にする機能。距離は関係なく、すぐにでも現地に飛ばす能力を持つロストロギア。詳しく調べないとわからないけど……たぶん間違ってないと思う」
最も魔法技術が発達しているといわれるミッドチルダでも、長距離の転送にはそれなりの時間と設備が必要だ。また、一つの施設だけでは距離が足りず、いくつかの中間点を経由しなければ遠くの距離には移動できない。当然、それに伴って時間もかかる。
だが、あのロストロギアが突然作動した瞬間、なのはは気付けばここにいた。これは今までの転送技術から考えればまさに異常なことであった。
そして、なのはの考えをさらに支持する存在が目の前にいる。
そう、自分の兄とは違う高町恭也の存在だ。
平行世界とは、異なる時空にしか存在しない世界である。それがどれだけの距離なのかはわからないが、少なくともミッドと地球の距離よりは遠いだろう。だというのに、この高町恭也のいる地球に自分は来ている。これは、距離に関係ない転送というなのはの説を強く裏付けていた。
それに伴って明らかになるのが、そのロストロギアの危険性だ。
飛ばされた先が同じ世界ならまだいいが、もし別の時空であった場合、下手をしたらその時空は全く違う世界法則を持っているかもしれないのだ。
そんなところに問答無用で介入していく力を持つロストロギア。確かに攻撃は出来ないが、悪意持つ者の手に渡れば誰にも気付かれない場所からの奇襲攻撃も可能になる。別の意味で非常に危険なロストロギアであった。
「ロストロギア自体は向こうにあるから、そのうち皆が解析して助けにきてくれると思う。だから、この世界に危険が訪れることはないから大丈夫だよ。……とまあ、これがわたしが今ここにいることの説明、かな」
「……なるほど」
恭也は腕を組んでなのはの話に相槌を打つ。
とりあえず恭也の感想としては、世界は広いんだなあ、の一言だった。
とりあえず平行世界の存在は認めていた恭也であったが、どうやら世界というものはひどく複雑に絡み合って存在しているようだ。
学術的興味はないが、単純にすごいと思う恭也だった。
「それと確認なんだが、やはりなのはは平行世界のなのはなのか?」
「うん。たぶんね。そんなに大きな違いはないだろうし……っていってもわたしたちの年齢は違うけど」
「まあ、そうだな。こっちのなのはは今九歳だ」
「思い出深い年齢だなぁ……。わたしのところのお兄ちゃんは二十五かな?」
「二十五……」
年上であることは覚悟していたが、数字で聞くと少しへこむ複雑な恭也の男心である。
「それで、月村忍さんと結婚して子供もできて、仲良く暮らしてるよ」
「なにッ!?」
あまりにも衝撃的な内容の言葉を聞いて、思わず恭也はなのはの肩をがしっと掴む。
「そ、それは本当かッ!?」
「う、うん……本当だけど……?」
「そ、そんなバカな……」
力なく崩れおちる恭也に、なのはは訳もわからずとりあえず肩を叩いて慰めた。
あの歩く迷惑と……とか、マッドサイエンティスト……とか、あれはアイツが勝手に言ってることなんだ……とか、色々と聞こえてくるのだが、なのははそっと心の耳を閉じて聞かないふりをした。
しばらくするとなんとか立ち直ったのか、恭也は気だる気な動作で立ち上がる。そして気持ちを切り替えるように一息吐くと、なのはの顔を正面から真っ直ぐに見据えた。
とてもさっきまで膝ついて落ち込んでいた男の姿には見えなかった。
「忍のことは置いておこう。それより、平行世界と言っても具体的にどこがどう違うんだ?」
「んー……それは、わからないかな。いくつか確認してみないとね」
それを聞くと、恭也はそうか、とだけ返して押し黙った。
しかしすぐに何事か一つ頷くと、改めてなのはに視線を向ける。
「ところで……突発的にここに来てしまったということは、行くあてはないんだろう?」
「え、うん。そうだけど……」
きょとんとした顔でなのはは答える。いくらここが自分のよく知る町とほぼ同じとはいえ、住む場所まではそうはいかない。
恭也はその返答に間髪入れずに提案する。
「なら、うちに来ないか?」
「へ?」
空気の抜けるような音がなのはの口から漏れた。
「その管理局の人たちが来るまで野宿というわけにもいかんだろう。そもそも女の子にそんなことはさせられん」
「た、確かにお金も持ってきてないけど……」
というわけで提案をのまなければ野宿決定というわけなのだが、なのはは二の足を踏む。
「うちは何人か預かってる子もいるから、遠慮する必要はないぞ」
「預かってる子? 居候さん?」
「……居候というか、妹的存在というか。……まあ、家族だな」
「そうなんだ……」
うーん、となのはは考え込む。
恭也の家ということは、間違いなく高町家だろう。だからこそ何となく自分は足を踏み入れるべきではない、と思ったのだが、聞く限りそういったことを気にする様子はない。
自分の知る高町家では、そういった人たちを預かっているということはなかったから、やっぱりここは違う世界なんだなあ、と思う。
同時に平行世界であっても、やはり自分の家族は優しいのだと思うとどことなく嬉しくもあった。
なのはがそんなことを考えていると、恭也がこほんと小さく咳払いをした。
その音につられて顔をあげると、恭也が照れだろうか頬を指でかく仕草をしている姿があった。
「その……なんだ……。俺も、なのはが来てくれれば嬉しいからな」
「えっ……?」
言われて一瞬あっけにとられるが、その言葉を理解した途端なのはの顔がぼっと火がついた様に染まる。
恭也自身も言ってやはり自分で照れたらしく、目をそらしたままだった。
「あ、ぅ……」
「………………」
なのはは声が詰まって言葉が出ず、恭也はそれ以上何か言う様子はない。というか、それどころではない感じだ。耳が真っ赤だった。
思わぬ不意打ちに、さしもの管理局不屈のエースも容易には動悸を抑えられない。
それでも何とか暴れる心臓と火照った顔を丁重に無視して(開き直ったとも言う)、なのははようやく口を開いた。
「……それじゃあ……お、お世話になってもいい、かな?」
「そ、そうか。……じゃあ、案内しよう」
「お、お願いします」
お互いに全く平静に戻ることはできていなかったが、何とか体裁は取り繕ってどことなく余所余所しいやり取りを行うことができた。
とりあえずはそのことにほっとする。火照った顔はなのは恭也ともに相変わらずだったが。
そうしてなのはが高町家に向かうことが決まり、早速向かおうとしたところで思わぬ待ったが入った。
『――Master』
「ひゃっ!?」
「だ、誰だ!?」
なのはは単純な驚きで、恭也は突然の第三者の登場に対する驚きと困惑によって普段の彼らからは想像も出来ないほど狼狽した声を出した。
やはり、さっきのことが尾を引いているらしい。
「れ、レイジングハート! どうしたの?」
なのはは自分の手に握られている桜色の杖に話しかける。正確には、その本体である赤い宝玉部分にだが。
『Sorry my master. However, I think whether it’s inconvenience to stay having worn the Barrier-Jacket.(申し訳ありません。しかし、バリアジャケットを着たままでいるのは都合が悪いかと思いますが)』
「……ああっ!」
『You did not notice,after all…(やはり、気がついてなかったのですね……)』
杖に据えられた宝玉が明滅すると、どこか呆れを含んだ声が響いてくる。
なのははそんなパートナーの言葉にうなだれた。
「うう……言わないで……。とりあえずレイジングハート。バリアジャケット解除、あなたも待機モードに移行して」
『All right,my master.(了解しました)』
言うと同時に、なのはの身体を纏っていた白と青の衣装は消え去り、きっちりとしたスーツの格好になっていた。まあ、その格好も白と青だったが。
そして、なのはの身長ほどもあろうかという杖も光を纏って縮んでいき、手のひら大の小さな赤い玉になると、なのはの手の中におさまる。
その一連の様子を、恭也はただ見つめていることしかできなかった。
「……ひょっとして、それが……」
「あ、うん。これがわたしのパ大事なートナー。レイジングハートだよ」
『Nice to meet you,Mr.(はじめまして)』
「あ、ああ、はじめまして。あー……レイジングハートさん?」
レイジングハートに恭也が挨拶を返す。と、なのはがそんな自分を見てくすくすと笑っているのが見えた。どことなく、レイジングハートも驚いているように思える。
「ふふっ、デバイスに敬語で話しかけてくる人初めて見たよ」
『…It’s a fresh experience.(……新鮮です)』
何やら自分が取った行動がよほど見慣れないものだったらしい。
「む……仕方ないだろう。俺は初対面ではまず敬語で話すことにしているんだから」
少しむっとして恭也が言うと、なのははどこか納得したような顔をした。
「ああ、それで九年前の時も最初は敬語だったんだ?」
「……まあ、な。もう癖のようなものだな」
ふーん、とまだ小さく笑ったままなのはは相槌を打つ。
なにがそんなに可笑しいのかと恭也は疑問に思うが、どちらかというと嬉しそうな顔をしているので、まあいいかと思いなおす。
さて、これでもうこの場に思い残すことはないだろう。管理局の制服とやらはいささか目立つような気もするが……服装程度、自分の知り合いたちの変人ぷりに比べれば瑣末事だとも思える。
自分も周囲からは変人扱いされていることを棚にあげ、そんなことを思う恭也だった。
(まあ……そこまであり得ない服装でもないだろう)
さっきのバリアジャケットのままだったら、さすがにおかしかっただろうが。
気がついてくれたレイジングハートに感謝だった。
「さて……」
「うん?」
恭也はなのはに向き合って、笑みを浮かべる。
あまり笑うということのない恭也だが、今日はここ数年でも間違いなくベスト3に入る良い日だ。
たまには、心から笑ってみるのもいいだろう。
それに応えるように、なのはも笑顔を浮かべる。
そのことに不器用ながらも笑みを深くし、恭也はなのはを促す。
「……案内しよう。見知った街かもしれないがな」
「にゃはは。それでもいいよ。行こう、恭也くん」
二人並んで小高い丘の草原を後にする。
偶然がもたらした九年越しの再会だったが、湿っぽかったのは最初だけ。なんともドラマのない再会だった気もするが、そんなことは関係なかった。
幼いころの別れから、ずっと指輪とリボンと共に互いの心にあった気持ちに向き合えるチャンスが巡ってきたのだから。
まるで奇跡のような確率で。
でも、それすら二人にとってはどうでもいいこと。
ただ今は再び出会って話すことができる喜びをかみしめながら、歩きなれた道を隣り合って進んでいくだけだった。
To Be Continued...
しかも面白いです!
恭也×なのははかなり好きなほうで色々読んできましたが、
今までにない新しい設定でわくわくしています。
続きが気になりますねぇ。
暇なときで良いので続きお願い致します。
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