まつろわぬ日々(リリカルなのは・クロノ転生)
4-3.7 「管理局にて」
※これまた第三十六話内に表記した9月19日から9月末の間の話です。
ユーノが十日でやってくれました。
俺がユーノに無限書庫での探索を依頼してから、きっちり十日後。なんとユーノはその僅かな期間で「夜天の魔導書」という名前まで辿り着いてしまったのである。
それが現在どうして闇の書と呼ばれているのかについては、まだわからないそうだが……。いや、むしろその過程をぶっ飛ばしてそこに辿り着いたのが凄い。いったいどうやったんだろうか。
それを聞くと、ユーノは通信画面越しでもわかるほど照れくさそうに、しかしどこか誇らしげにこう言う。
『いや、闇の書関連の情報ってことで同じようなキーワードを並行して検索してたんだよ。闇、黒、夜とか、書、本、誌って感じで。そこに古代ベルカっていう情報も加えると、わりとすぐに出てきたんだ。まぁ、いくつか怪しいデータもあったからそういうものの精査に時間がかかったけどね』
なにそれ、どういうチート?
無限書庫ってデータバンクとしては無茶苦茶優秀なのに、その不便さがその優秀さを完全に打ち消し、「一冊の本のために人生を棒に振る気はない」とまで言わしめたという管理局一番の頭痛の種だぞ?
その言いようからも判るように、たった一つの情報を得るために何ヶ月もかかることがザラという、効率や合理性といった言葉に喧嘩売っているような存在だ。
だというのに、そこにある情報量は膨大で利用価値は抜群に高い。その膨大さと機密性ゆえに外部に任せることも出来ず、高い金使って維持しているのに、実際に役に立つことは稀というお荷物部署だったのに。
ユーノに任せると十日で見つけちゃうの? 言ってることは簡単だけど、どうせ並行検索ってアニメみたいに何冊も一気に検索かけることを言うんでしょ? あんなこと普通は出来ないって。
なのはもフェイトも大概チートだけど、ユーノも負けず劣らずチート野郎である。ただ、その能力が縁の下方向にカンストしてるってだけで。
俺もそれなりに才能あるほうだと思ってるけど、これはないわ。だって管理局創設以来の問題を9歳で解決しちまったようなもんだぜこれ。
ええい、スクライアのユーノは化け物か!
『もちろん、司書の皆の力も大きいけどね。皆、仕事よりこっちを手伝いたいって言うから……』
そりゃ無限書庫の整理を任されている司書にとって、ユーノの技術は喉から手が出るほどに欲しいもんだろうからな。
仕事どころじゃなくなるのはわかる。
『まぁ、まだ詳しいことはわかってないけど、中間報告って感じかな。ここまでくれば、あともう少しでだいぶ情報も揃いそうだよ』
「ああ、ありがと。助かったよユーノ」
『いいよ。僕も知らないことが一杯あって結構楽しめてるから』
古代の技術や文化を専攻している学者という側面も持つユーノだ。そんなユーノにとって、無限書庫はまさに宝の山にも等しいものなのだろう。
楽しいと言った表情は本当に楽しそうだった。
「そうか。じゃあ、また何かわかったら教えてくれ。あ、その時は俺の専用回線でな」
『うん、わかった。でも、なんで専用回線で?』
「あ、俺明後日から休暇だから」
『へ?』
ちょっと間抜けな顔になったユーノに、俺は手を合わせて頭を下げた。
「悪い! どうしても外せない用事なんだよ!」
『……まぁ、いいけどね。どれぐらい?』
「一ヶ月」
『一ヶ月!? それはまた随分休むんだね』
「まぁ、有給もあったしな。この際使っちまおうと」
『一ヶ月の有給ってどれだけ働いてたのさ……』
呆れたように言うユーノに、俺は苦笑いを返すしかない。
病気になった時とか怪我をした時とか、そういう時にとればいいや。そう考えていたんだが、俺って非の打ち所がないぐらいに健康体だからな。
結果、休日以外に休む必要があまり感じられず、ここまできてしまった。14歳としては明らかに働きすぎだが、なってしまったものは仕方が無い。
というか、そのおかげで今回有効活用できるのだから、結果オーライだ。
「というわけで、悪いけどよろしく頼むぞユーノ」
『わかった。そっちこそよく休みなよ』
最後にそう気遣ってくれるユーノの優しさに頷きを返して、俺は通信を終えた。
さて、と。意外と早くに情報が入ったものだ。さすがは将来で無限書庫司書長という名誉職のようなものでしかない役職を、実務的な役職に転じさせた人物だけはある。
ともあれ、これで俺が「夜天の魔導書」を知っていてもおかしくない状況は整えた。あとはロッサの伝手から聖王教会の資料庫で調べさせてもらうだけだ。
さすがに聖王教会には、夜天の魔導書の名前ぐらい残っているだろう。詳細までわかれば闇の書から戻す際に役立つのだが……。まあ、こっちは保険だな。
ようするに、俺が夜天の魔導書を知っていることが不自然じゃなくなることが重要だったのだ。動機だって、「優秀な探索魔法の使い手に出会ったから、因縁のあるロストロギアについての調査を依頼した」といえばまかり通る。
ちゃんと依頼料も支払うから、私的利用と言われたとしても、形式上は問題ないで通せるしな。ユーノからはお金なんて要らないとは言われてるけど。
しかしまぁ、10月に入る前に状況を調えられるとは思わなかった。この点は本当にユーノに感謝である。
これで俺も気兼ねなく闇の書攻略に専念できる。
9月29日。俺が地球に向かう二日前の出来事だった。
ちなみに、そんな会話をユーノと交わす十日前。
つまりフェイトと二人、部屋でまったりと過ごした日だ。
フェイトが迎えに来たアルフと一緒に俺の部屋を去ったあと、俺はエイミィと母さんの元を訪ねて休暇をとった旨を報告した。
エイミィは執務官補佐というある意味で俺とセットともいえる役職を持っている。管制主任の仕事が主とはいえ、報告しないわけにもいかない。
母さんも同じような理由で、俺が所属している艦の艦長で責任者だから話を通すのは当たり前だ。まあ、それ以前に家族なんだから伝えるのはそれこそ当然だが。
そして休暇を取ると伝えた時の二人の反応は以下の通りである。
まずはエイミィ。
「いいなー、休暇かぁ。私も補佐する人がいなくなるんだから、休みにならないかなぁ」
「いや、お前はアースラの管制主任も兼任してるだろ」
「ぶーぶー」
俺の自称姉は、ぶーぶー言いながら何故か俺の髪の毛をいじり始めた。鬱陶しかったので、やめてもらって立ち去る。
鏡を見たらヘアピンで髪が留められていた。道理で違和感があると思ったが、どこに持ってたんだこれ……。
次に母さん。
「あら、ようやく休暇を取る気になったの?」
「まぁ、溜め込んでたし」
「若いのに仕事ばっかりで心配してたから、よかったわ」
「むしろ若いから仕事ばっかりだったって感じだけどね。若いと体力もあるし」
「……いいわねぇ、若いって」
若い若い連呼してたら溜め息をつかれてしまったので、とりあえず慰める意味を込めて肩にぽんと手を置いておいた。
嫌味かしら? とジト目で睨まれたのはいい思い出。もちろん、俺は曖昧な笑みを返して誤魔化したのだが。
エイミィは最後までいいなーいいなー言っていて、母さんは最後にお土産はよろしく頼むわねと言って送り出してくれていた。
本当は俺が抜けたことで、様々な調整が大変だろうに、俺のために明るく応対してくれたことには本当に頭が下がる。
特に母さんはAAAの執務官の代わりを探さなくてはならないのだから、相当に苦労するはずだ。俺もそんな苦労をかけたくはないんだが……今回ばかりは、母さんに負担をかけてしまう。
しかもこれは俺のわがままだ。それで母さんに負担を強いることは心苦しい。なにしろ、俺が魔法を習うきっかけは母さんを守りたいからだ。心苦しく思わないはずが無い。
だがしかし、はやてと闇の書は譲れない問題だ。
だから、ここは母さんに迷惑をかけてしまうことに納得して、割り切らなければならない。
とはいえ、迷惑をかけるだけというのはさすがに納得できない。というわけで、また今度母親孝行でもしようと思う。それで等価かと言われれば微妙だが、それぐらいしか思いつかないのだ。
まぁ、当面はそれということにしておいて、他に何かいいものを思いついたらそっちにするという方向でいこう。
そう逡巡に決着をつけて、俺は今後の予定を詰めていくのだった。
==========
あとがき
ここのところのミニSSは、A's本編開始前の補足的要素ばかりです。
一つのお話にするには、あまりに細々としすぎているので、こうしてミニSSとしてそれぞれ分けて書いています。
これが終われば本編のほうに入りますので、どうかミニサイズでも怒らないでくださいm(_ _)m
そういえば、これが250万ヒット記念の更新ってことで駄目ですかね?^^;
もう何にも考え付かないんですよ。しかも既に250万超えてて時間もないし……。
というわけで、これでどうか勘弁してください……orz
ユーノも大概チートだよなと思う今日この頃。
それでは、また次回もどうかよろしくお願いします。
打ち止めと言っていたのに騙されたZE
ヘアピンで思った。
クロノの髪形を変えるとしたらどんな風になるだろう?
両サイドを流す?
グレアムのおっさんみたくオールバック?
逆立てて箒頭?
そして、言われてみればユーノも存外チートだよなぁと思うきょうこの頃。
多分、ステータス振り分け間違えたんです、きっと、多分。
でも、あんだけシールド能力高いなら、シールドナックルみたいなのあっても…ああ、クロノ君と被ったw
何はともあれ、お疲れ様です。
ご自分のペースで、更新なさってくださいね。
楽しみにまってまーす
PS:で、イデアさんヒロイン枠昇格は…まだ、ですか?w
はやい、はやいよスレ〇ガーさん!
とりあえずお疲れ様です。
あまり無理はしないでくださいね?
でもこっそり続きも期待してます(ぁ
きょう×なのの件は自分のペースでゆっくりやってくだしあ。
たとえ完結に10年かかっても見てますので(ぁ
もはや自分でもペース配分が理解できていません^^;
ちなみにミニSSはあと一回の予定です。
クロノはエイミィにヘアピンで髪を弄られましたが、どんな感じかというと髪の一房が変に跳ねてた、って感じです。
さすがにあの年でオールバックは渋みが足りませんのでw
>de-さん
私が3日でやってしまいました。
細かいところを書こうと思ったら、意図せず溜めてしまうようなことにw
特に溜めたつもりはありませんので、本編にそこまで大きな展開を期待しないでくださいねー^^;
>弟月さん
ユーノは経験値の振り分けミスですw
補助系統ばっかに振った結果がこれだよ!
でもユーノも色々出来ると思うんですけどね。様々なところのユーノ強化SSを見る限りw
イデアのヒロイン昇格…だと…。
その発想はなかったw
>タピさん
調子に乗った結果がこれだよ!
不安定な奴で本当にすみません……。
ユーノは補助に関してはなのは並の天才だと思っています。
原作でも無限書庫に関してはホントにチートですしね…。
>a.clineさん
こういう時、慌てたほうが負けなのよね。
決まってるだろう、どこまでもさ!
……と、ネタ返しはこれぐらいにしてw
お気遣いありがとうございます。
無理しない範囲で頑張っていこうと思います^^
きょう×なのに関しては……いや、ホントにすみません。
でも完結はさせたいと思っておりますので……^^;
ユーノくんは天才だと思うんだ。なのはやフェイトたちと方向性が真逆なだけで。地味にユーノのこれからの活躍にも期待してるこの日この頃。
本編補足にしても更新が早いこのごろ。無茶だけはしないでくださいね。
ホントに哀れでなりません。
サポートスキルじゃチートキャラなのに(爆)
そして、クロノに徹底的にこき使われる……
栄養ドリンクが必須アイテムになるのか?
……きょうxなのの方も楽しみにしてます。
ついでに恭ちゃんのデバイスとスキルも気になったりw
ホントに哀れでなりません。
サポートスキルじゃチートキャラなのに(爆)
そして、クロノに徹底的にこき使われる……
栄養ドリンクが必須アイテムになるのか?
……きょうxなのの方も楽しみにしてます。
ついでに恭ちゃんのデバイスとスキルも気になったりw
さてと、今回の感想ですが、基本的になのはに登場するキャラはチートと言われかねない実力の持ち主だなぁということを思いました。
なのは、フェイトは言うまでもないですが、原作のクロノでしたって、DからAAAまで実力を上げてますし、stsだと、キャロは、竜を呼べますし、凡人だと悩むティアナさえも管理局に対する有効な兵器とも言える戦闘機人を撃破してますしね。
こう考えてみると、十分チートなユーノも影が薄くなるのもしょうがないのかな…
ユーノくんは同じく天才だと思っています。目立たないだけで…^^;
それにしてもFateも見たのは羨ましい。私もそのうち見に行きたいです。
そしてお気遣いもありがとうございます。無理せず頑張るとします^^
>godcatさん
裏方としてはとんでもなく優秀なんですけどねw
まあ、でも無限書庫に勤めるようになったら管理局としても重用することになると思いますけどね。
きょう×なののほうも頑張ります。
恭也にデバイス持たせるかどうか、その予定すら未定ですけどw
>鎖さん
とりあえずティアが自分を凡人だと言うのが理解できない今日この頃。
そもそも魔法そのものを使えない一般人からしてみれば贅沢な悩みだよなー、と思ってしまうのは私が一般人だからですw
彼女は周囲が目に見える形で優秀すぎたことが問題だったんでしょうね。
しかし、そんな中で出番的にも報われていないユーノという存在がいることを彼女は知るべきでしょうねw
はやい、はやいよスレ〇ガーさん!
とりあえずお疲れ様です。
あまり無理はしないでくださいね?
でもこっそり続きも期待してます(ぁ
きょう×なのの件は自分のペースでゆっくりやってくだしあ。
たとえ完結に10年かかっても見てますので(ぁ
順調に闇の書攻略の計画を進めているクロノ。コレが如何影響を与えるのか楽しみです。
ちょっと本気出してみましたw
まあ、その反動で書かなくなる時期も出てしまうかもですけど…^^;
無理はせず、頑張ろうと思います。
ありがとうございます。
きょう×なののほうも……が、頑張ります。
>俊さん
うちのクロノはユーノのことを普通に友人だと思ってますからね。
そこまで無理矢理やらせたりということは確かにないかもです。
今後の影響については、これからの展開にご期待ください^^
>AAさん
何を仰りたいのかわかりません。
また、馬鹿にしたような発言は正直に申し上げて不快です。
批判等の意見を述べるのなら、どういった点がどうだったというように、わかりやすく申し上げていただけると助かります。
…さて、これで手札はある程度纏まった。そこにクロノの持つジョーカー(原作知識)をどこでだすのかが楽しみでドキが胸胸してきましたww
なのポ…一通りクリアしましたがフェイトとザッフィーの書が取れず解禁されない…殲滅者が使いたい…orz
条件が未だ解らず…。シグナムの扱い易さはお気に入り、貸した友からは技に癖があるから俺には無理。とのことでしたががが。
ともかく長くなりましたが、お体に気をつけてください。
わ、私は突っ込まないぞ…!
とりあえず、今後の展開をお楽しみにと言っておきます^^
そしてなのポですか…。
断片入手の条件は、「ストーリーモードを一度もフェーズを落とさない状態でクリアすること」です。
フェイトの闇なのは戦などでは苦労するでしょうが、頑張ってください。
シグナムは長距離の攻撃力がないのが痛いですね。それ以外の距離ならTUEEE!やれる可能性もあるキャラなんですけどw
お気遣いありがとうございます。なのポのほう頑張ってくださいね^^
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