4-0 プロローグ
――以下、前回のその後をわかりやすく。
俺:「ちょ、シャマルゥ来たコレwww」
シャ:「なぜ私の名前を(ry」
俺:「うぇwwwwヤwwwバwwwスwww」
シャ:「ちょっとお話しましょうか……」
俺:「\(^o^)/」
以上。
……まあ、さすがに本当にそのまま言ったわけではないが、動揺のあまりにシャマルの名前を聞く前に名前を言ってしまったのは本当である。
具体的には俺が噴き出した茶を拭くのをシャマルも手伝ってくれた時。思わず「あ、どうもシャマルさん」と言ってしまったのだ。うん、正直自分でもこれはないと思った。
当然この時点で俺が知っているのはおかしいわけで、シャマルは警戒心バリバリ。魔力持ちであることも速攻でバレて、シャマルからの念話による追求が行われた。横でなのはとはやてが楽しくおしゃべりしている中での問答は正直辛かったです。
逃げようにもいつの間にかトラップが仕掛けられていてどうしようもなかった。逃走にしろ攻撃にしろ、行動した時点でやられていただろう。
支援特化型は伊達じゃないらしく、俺が名前を出した瞬間にすぐさま周囲に設置したらしい。うっかりシャマル先生は所詮二次の存在だとでもいうのか……。屋内では絶対に敵に回したくないタイプだ。
まあ魔力遮断で強引に突破するという手段もあったが、完全に敵対してしまうのは後々を考えるとまずいことになる。他の魔導師に存在が知られたとなったら、守護騎士連中やグレアム提督がどんな行動を起こすのか想像もつかない。
しかもここにはなのはがいて、美由希さんも家の中にいる。あまり事を大きくするのは避けたかった。
というわけで俺は大人しくシャマルに従い、俺が管理局員であることなどを話したのである。
ちなみに名前を知っていたことについては、闇の書について調べたら判ったと言っておいた。実際闇の書については父さんが死んだ後に随分調べたし、その際に容姿の特徴と名前が資料に残されていたのは事実だ。
そも何度も次元世界に現れているのだから、それぐらいはわかっていて当然だろう。事実、シャマルも隠し通せているとは思っていなかったようで、突っ込んできたりはしなかった。
そうして話している間、俺はまた別の思考を働かせていた。すなわち、こうなってしまった状況をどうするかである。
実はA’sについて、俺の能力を使えば原作以上にいい結末にできるのは恐らく間違いないが、最初から関わる必要はないかな、と結論を出していた俺にとって、この状況は予想外にすぎた。最後のほうにに手を出していけばいいかと思っていたのである。
そもそもなのはとはやてが既に出会っているとか、どういうことなの……。さすがの俺にもそんなこと想像できんですよ。
そんなわけでシャマルに説明している間、どうするべきかを考えているんだが……結局のところ、選択肢は多くはないのだった。
1 適当に誤魔化して帰る(帰すわけがありませんね、わかります)
2 誰にも言わないと約束して帰る(信じるわけないだろjk)
3 完全に敵対して強行突破する(その代わり、完全に相手の出方は不明になる)
4 ここは一時休戦とする(魅力的だが、結局知らないところで大幅に出方は変わるだろう)
5 協力を表明する(俺の目が届くことは確かだが、管理局からの離反になる)
……ぱっと思いつくのはこの五つ。
この中でまず1と2は除外だ。向こうがそんなことを許すわけがない。よしんば成功したとしても、結局は3と同じ状況になる。利点が少なすぎる。
3も除外だ。敵対するのはいいが、この時点での敵対はどんな影響が出るか判らない。グレアム提督の出方にまで関わってこられると、最悪バッドエンドになりかねん。
4は一番魅力的な案だが……果たして向こうが応じてくれるかと考えると可能性は低い。こちらは相手のことをよく知っていて、向こうも管理局のことはよく知っている。しかし彼我の戦力規模が違いすぎる。更に悪いのが向こうにはやてという守るべき存在がいる点だ。圧倒的に立場が弱い彼らがここで一時休戦を承諾するのは難しいと言わざるを得ないだろう。
そして最後の5だが、実はこれが一番被害が出ない案ではある。あくまで今の時点でという前提だが。一応は未来の知識を持っている俺がいれば、多少は管理局との軋轢を避ける要因になりえるだろうし、向こうも信頼は出来ないだろうが敵方に情報を渡されることを考えれば、まだこちらのほうがいいだろう。それで出る被害が俺の自由と局員辞職というだけで。
まあ、確かに未練はあるが、一番お互いに武力衝突を避けられる案ではある。そのぶん、グレアム提督の件が相当にカオスなことになるだろうが。
……さて、そんな状況なわけだが、この状況において俺はどうするべきか……。
最終的にこの中から選ばなければならないのだとしても、その前にまず話し合いの場が持ちたいというのが本音なのだが、上手くいくだろうか。
もし話し合いに応じてもらえなかった場合、本当にこの五択から選択しなければならなくなる。いずれ選択するにしろ、できれば話し合ってからが望ましいのだが。
――仕方ない。力技になるが、やってみるか。
失敗すれば強制的に3ルートに突入だが、1と2は論外、4は不可能で5ルートでも相手に主導権を握られるという点でこっちには不利だ。なら、この可能性に賭ける。上手くいけば、話し合いの場が持てるのだ。交渉次第では、更に多くの選択肢が得られるだろう。
俺は意志を固め、シャマルとの会話に意識を割いた。
<……事情はわかりました。なのはちゃんが魔導師だったというのも驚きましたけど……>
<ただの魔力持ちだと思ってたのか?>
<ええ。莫大な魔力でしたから、疑ってはいたけど>
<蒐集することはないのか?>
<……私たちの今の主は争いを好みません。私たちから手を出すことは絶対にないでしょう>
つまり、俺たちから手を出せばその限りではないということか。しかも何気にはやてが主だと明言していない。主の情報は明かさないあたり徹底している。俺は知っているから意味はないけど。やりおる、シャマル。
しかし蒐集をしないということは、やはり今はA’s開始前のはやての病状が進行していない状況なわけか。進行していたなら、問答無用でなのはは蒐集されていただろうし。
となると、今ならまだ交渉が持てるということだ。逆に言えば今でなければ絶対に交渉は持てない。今後会いに行くことはできないだろうし、そうなれば次に会うのは敵となってからだ。こちらの話を聞くわけがない。
ここはこの機会を利用して向こうに夜天の書の情報を渡しておくべきかもしれない。協力するかどうかは別にして、話をするぐらいなら何とかならないだろうか。
<一つ頼みがある>
<なんでしょうか>
俺の唐突な言葉に怪訝な顔を見せながらも、シャマルは応じる姿勢を見せる。
それを確認してから、俺はこちらの考えを告げた。
つまり、話し合いが持ちたいと。
<もちろん、場所はそちらが指定する場所でいい。ただ、闇の書の主には同席して欲しい。闇の書に関することで重要な話がある>
この要請に対してシャマルは迷う素振りも見せなかった。
<受け入れられません。主が危険に晒されますし、そもそもこちらが従う利がありません。いま状況的に有利なのは私です。トラップには気づいているんでしょう?>
嘲りも侮りもない。シャマルはただ真剣に俺を見据えていた。油断している様子もなく、俺がトラップ解除に入ろうとした途端、行動を起こすつもりだろう。そのための準備も抜かりないと見た。本当にいい参謀である。
だが――、
<甘い>
<――なッ!?>
ノーモーションで瞬時に纏わりつく行動阻害術式を解除。そのまますぐになのはの傍に寄り、おしゃべりに興じていた二人のうちなのはの腕を取って庭に面した窓側に距離をとった。
「ふぇ?」
突然の出来事になのはが何とも平和な声を出したが、気にしない。
向こうを見れば、あちらもはやてをかばって後退していた。シャマルの表情は驚愕と焦燥が入り乱れた複雑なものだった。
「普通の魔導師なら確かにあれだけ隠密性に優れた対人トラップがあれば脅威だろうが、あいにくと俺にはレアスキルがあってね。それを使って歩くだけでトラップは勝手に無効化されてくれる。よほどのトラップでないと、俺は引っかからない」
「………………っ」
さすがにそんなレアスキルの存在は想定外だったのだろう。結果、シャマルは決定的な隙を見せて俺に遅れをとる形となった。その自分の不明を知ったシャマルは悔しげに唇をかんでこちらを睨み付ける。
そのシャマルの背後にいるはやては、状況がわからず目を白黒させている。こちらのなのはも似たようなものだが、魔導師として実戦を経験していたことが幸いしたのかすぐに我を取り戻した。
「ねぇクロノくん、いったい……」
<悪い、ちょっと待っててくれ>
念話でなのはに断りを入れる。説明は後ですればいいが、今この機会を逃すわけにはいかない。
なのはが大人しく下がってくれたのを感じて、俺はそれに感謝しつつシャマルに話しかけた。
「なあ、あの時そのまま俺はその子を狙うことも出来たのはわかっているだろう? けど、こっちにそちらを害するつもりはない。話し合いの場が持てるなら、どんな状況でもかまわない。何とか話し合いが出来ないか?」
「………………」
シャマルは黙して答えない。思考に思考を重ねているのか、もしくは八神家にいるであろう他の守護騎士と秘匿通信でも交わしているのか。いずれにせよ、結論が出るまでは相応の時間がかかるだろう。
俺はその間になのはに事情を伝えておこうかと念話を送ろうとする。
が、結局なのはに念話を送ることはなかった。意外なところから援護射撃がやってきたからだ。
「なぁ、シャマル。話し合いって何やのん? ひょっとして、闇の書関係?」
「は、はやてちゃん!」
闇の書という固有名称を持ち出したはやてに、シャマルが焦って諫めようとするも、主に対する遠慮ゆえか、はっきりしない。端から見ているとシャマルが何やらおろおろしている、といった感じだった。
しかしはやてはそんなシャマルを前に、少しも態度を変えることはない。その反応で察したのか、はやては次に俺のほうへと向き直った。
「そういえば、しっかり挨拶してませんでしたね。はじめまして、八神はやていいます」
「あ、ああ。はじめまして。クロノ・ハラオウンだ」
互いに頭を下げあう。顔を上げるとにこりと微笑まれたので、なんとなくこちらも笑みを返す。男の笑みなど気持ち悪いだけかもしれないが、まあ反射的なものだった。
はやてはそのやり取りのあと、俺に何者かと問うた。それに俺は管理局という組織の魔導師と答える。次いでなのはとの関係を問われ、妹の親友兼今日から弟子と答えた。妹の親友のあたりでなのはがちょっと嬉しそうにしていたのは余談である。
それらの答えを聞くと、はやては一つ頷いて、俺とシャマルの顔を交互に見た。そして両者に対してこう言った。
「事情、聞かせてもらえませんか?」と。
シャマルは本当なら反対したいだろうが、主の言葉なので無碍には出来ない。俺はもともと話し合いがしたかったので、当然それに応じる。
結果、両者共に会談の席に着かざるを得なくなった。こちらとしては嬉しい限りなのだが……うーむ、こういう場面で落ち着いて対応できるとは9歳児とは思えないな。
こういうのは、さすが未来の部隊長殿とでも言えばいいのだろうか?
まあそれはともかく、こうして俺たちはなし崩しに話し合いの場を持つこととなったのである。
さて、どうなることやら。
続
==========
あとがき
何とか帰ってまいりました、雪乃こうです。遅くなって本当にすみません。
まつろわ、ようやくA's編です。
まだプロローグですが、これからの展開をどう持っていくか、既にいっぱいいっぱいだZE☆
今回は序章ということで分量は少なめ。
そのうちWeb拍手のほうも更新したいなぁと思っているんですが、卒業制作関係でなかなか進みません。本当にすみません。
そんな私ですが、よければ次話もまた読んでやってください。
それでは、またよろしくお願いします。
大変お待たせしてすみませんでした。
プロローグだけですが、楽しんでいただけたならよかったです。
卒業制作が優先となってしまいますが、SSのほうも頑張ろうと思います^^
>asuka_sfさん
お待たせしてすみませんでした。
クロノ、いきなりやっちゃいましたw
これからどう物語が展開していくのか、楽しみにしていてください^^
こちらこそ、見放さず待ってくれてありがとうございました。
次話もよろしくお願いします^^
はてさて、どうなるでしょうか^^
色々と状況が変わりますから、それに対応してやっていくつもりです。
お楽しみに!
>俊さん
うっかりでしたねw
これをきっかけに原作とは状況が変わっていきます。
どうなるのか、ぜひ期待していてください^^
>ネコミ・ミスキーさん
ロッテリアの二人はグレアム提督に服従ですから、必然敵対する立場なんですよね。
二人がどうなるのかも楽しみにしていてください^^
クロノは知らず棺おけに片足突っ込んでますw
ところどころでミスをするんですよねー^^
>犬吉さん
A'sはしょっぱなから原作とは違ってきます。
とはいえ、そこまで大風呂敷広げるつもりもないですけど^^;
次回もどうかお楽しみに!
卒業制作のほうもがんばります!
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